弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年4月15日

武装解除

著者:伊勢崎賢治、出版社:講談社現代新書
 紛争屋という職業についている48歳の日本人男性の体験にもとづいた本です。すごい日本人だと感嘆します。いえ、日本人女性もいるそうです。すごいですね。このような人たちがいるおかげで、日本人も少しすこしは国際平和に貢献していると言えるのですね。なにも平和貢献は自衛隊の専売特許ではありません。
 東チモール、シエラレオネ、アフガニスタンの現地に出かけ、ゲリラと政府軍のあいだに入って武装解除をすすめるのです。もちろん、実際にはたびたび難問にぶつかります。それを丸腰でさばいていくのですから、たいしたものです。勇気があります。
 人道援助は、もはや戦争利権のひとつになっている。人道援助の利権をめぐって、NGOと営利企業とが競うような時世になっているのです。
 世界の紛争現場に身を置いてきた著者は憲法改憲論に組みしないと強調しています。
 海外派兵はおろか軍隊の保持をも禁止している現行憲法下でひどい状況が生まれているから、たとえ平和利用に限定するものであっても海外派兵を憲法が認めてしまったら、違憲行為はさらに拍車がかかるのではないか。
 つまり、現在の政治状況、日本の外交能力、大本営化したジャーナリズムをはじめ日本全体としての「軍の平和利用能力」をみたとき、憲法とくに9条には愚かな政治判断へのブレーキの機能を期待するしかないのではないか。あえていう。現在の日本国憲法の前文と第9条は、一句一文たりとも変えてはならない。
 世界の内戦の現場で、身を挺して平和を守ってきた著者の言葉にはズッシリとした重みがあります。

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