弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年4月 1日

凶犯

著者:張平、出版社:新風社文庫
 中国の山村で、国有林保護監視員が村を牛耳る4人兄弟の言いなりにならず、ついには殺しあいに発展していく。すさまじい展開です。小説は事件発生の前と後とを時間刻みで交互に描いていきます。目まぐるしいのですが、それが緊迫感を生むのに成功していて、結末と原因が手にとるように分かります。
 中国の農村部で、取り残されたような農民の欲望に支えられ、絶大な実権を握って君臨する4人兄弟がうまく描かれています。殺人事件のあと、県から偉い役人が派遣されてきて、聞きとりが始まります。公正な結論が出ることを期待していると、とんでもない。でも、こんなものかなあー。日本だって、表面はともかく、本質的にはあまり変わらないよな。そう思わせる結末です。
 中国でベストセラーになったのも、うなずける凄い小説でした。

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