弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年3月28日

虫をめぐるデジタルな冒険

著者:小檜山賢二、出版社:岩波書店
 すごーい写真のオンパレードです。この世の中に、こんな生き物がいたのか。つくづく、この世の奥は深い。そう実感させられます。
 つやつやと輝き、ふさふさと羊毛のようにたおやかな厚手のコートをはおった貴婦人の装いその眼はトンボの複眼。見逃すところはない。触覚が長く伸び、身近なものをすべて感じとる。
 こくんぞ虫、もといコクゾウムシは米びつの害虫として有名です。えっ、そんなの知らない。そうでしょうね。害虫が穀物倉庫に生存するのは実は難しいこと。そんな指摘がなされています。なるほど、なるほど。いかにも人為的な環境ですから・・・。
 この本に紹介されているゾウムシの写真を見ると、人間が万物の長なんて偉ぶっているのが恥ずかしくなります。
 18世紀にリンネが分類したとき、昆虫は2000種もありませんでした。でも、その後の100年で昆虫は10万種となり、今は100万種です。ところが、アマゾンの熱帯雨林に2000万種、東南アジアに8000万種の生物がいると推定されているというのです。昆虫は3000〜5000万種はいるだろうといいます。蝶とハエとガは15万種、蜂が14万種というのに比べても、昆虫は圧倒的に多いのです。ゾウムシが属する昆虫は40万種。これは、自然界でもっとも成功したグループとされています。この本は、まさに、そのゾウムシをデジタル写真で微細にとらえたのです。その絶妙な姿かたちには、息をのむばかり。ただただひたすら圧倒されてしまいます。
 この本は、単にデジタルカメラでとった写真をのせたというものではありません。マイクロ・フォトコラージュといって、ミクロの映像をデジカメで合成していく作業についても紹介しています。実は、このあたりになると、私には、まったく理解できないところではあります。自然界の奥がいかに深いかを実感させてくれる写真が満載です。ぜひ、あなたも手にとって見てください。

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