弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年3月16日

検証・日本の組織ジャーナリズム

著者:川崎泰資、出版社:岩波書店
 このところ新聞やテレビに、チェック機能のみならず特ダネやスクープも少なくなっているように感じる。私もまったく同感です。つまらないこと、どうでもいいことは大きく取りあげ、本当に私たちが知らなくてはいけないことはちっとも大きく報道されていない。そんな気がしてなりません。たとえば、イラクのサマワです。日本の自衛隊が出かけて1年になります。いったい、どんな町なのか、NHKは特派員を出して、定期的に街の様子を知らせてほしいと思います。いえ、自衛隊に反対している人の声だけを紹介しろというのではありません。賛成している人もいていいのです。もちろん反対している人が多いんだったら、それも報道すべきです。いまサマワの市民がどんな生活をしているのか、日本人は知る必要がありますし、NHKはそれを知らせる義務があるように思います。
 ところが、この本が強調しているように、イラク戦争が始まったとたん、NHKも一般マスコミも記者は全員イラクから撤退してしまいました。ヨーロッパの報道機関は残ったのに・・・。そして、NHKは自衛隊員のとったビデオをそれと知らせずに放映したのです。なんとも情けない話です。
 NHK福岡放送局の局長室(応接室)に入ったことがあります。まるで大企業の社長室という雰囲気なので、居心地が悪くなりました。海老沢前会長の往生際の悪さはひどいものでした。まったく私物化しています。天下の公共放送が泣きます。
 NHKの組合員の6割がNHKを政府の御用機関と考えているそうです。でも、今や御用機関どころか、国家機関そのものではないのか。著者は厳しく指摘しています。世論調査の報道にしても、政府に都合が悪い結果が出たときには報道しないというのです。ひどいものです。そう言えば、NHKはイラク戦争反対の集会やデモ行進をまったく報道しません。憲法改正反対の声をあげた有識者による「九条の会」についても報道しません。
 やっぱり、テレビはNHKをふくめて見る価値がないとアンチ・テレビ派の私は考えています。いかがでしょうか・・・?

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