弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年3月11日

赤道の国で見つけたもの

著者:市橋さら、出版社:光文社
 日本の女性はえらい。こんな本を読むと、私は心底から確信します。といっても、ここでは日本人男性がつれあいとして登場はしているのですが・・・。
 22歳の日本人の独身女性がアフリカ・ケニヤへ単身出かけます。そして、ケニヤのスラム街へ足を踏み入れるのです。たいした勇気です。いったん帰国し、自分をみがいて、再びアフリカ・ケニヤへ出かけたのです。すごいですね。単なる好奇心だけでは、とてもこういうことはできません。
 スラムでは大人たちが平気で嘘をつく。自分を正当化するため、人から同情されるよう、何でも言う。だから、子どもたちも嘘をつくことはあたりまえのことと思っている。
 優秀な子どもも、ストリートチルドレンになって大きくなると、悪い方へその頭脳をつかってしまう例がスラムの子にはよくある。
 スラムの子は、今度いつ食事ができるか分からないという恐怖心から、過食になるか、反対に、まともに食事をしたことがないため胃が小さくなってしまってよく食べられなくなっている。
 スラムでは売春も多い。母親が娘に売春させて現金を得るのは珍しくない。成人した女性はエイズ感染者が多いため、少女売春も盛んだ。
 貧しくてかわいそうだからということでスラムの子にお金を与えて甘やかすと、子どもの心を傷つけ、内面からダメにしてしまう。人はもらうことより、自分の手で生きることを学ぶことが大切だ。どんなに貧しくても、母親や兄弟と一緒に暮らすことの方が大切だ。
 スラムに生きる子どもたちに共通しているのは、とても頑固で粘り強い性格がということ。生まれてから何ヶ月間も、栄養らしい栄養も与えられずに生き抜いた子どもたちは、生きようとする強い意志があった。つまり、人一倍強い意志をもち、頑固な性格だからこそ、彼らは生き延びられたのだ。スラムでは生き抜くためには、人一倍強い意志と、自己を貫き通す強さを持っていなければ、人生につぶされてしまうのだ。
 ケニヤでは弁護士であっても、一度失業すると、なかなか再就職できない。えっ、そうなの・・・、と驚いてしまいました。
 ケニヤには貧しい子どのたちの入れる幼稚園をつくり、トイレのつかい方、身体を清潔にすること、そして英語を話せるようになることなど、現地のスタッフとともに教育実践をしている話です。もっともっと、こういう分野で多くの日本人が活躍するようになったらいいなと、つくづく思いました。
 年齢(とし)をとってアフリカまで出かける勇気のない私ですが、なんだか私にまで生命力を分けてもらった気がしました。読んでいるうちに身体の芯があたたまってきました。

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