弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年3月11日

細胞紳士録

著者:藤田恒夫、出版社:岩波書店
 人間の身体は、まさに精密な化学コンビナートの工場群だとつくづく思います。誰が、どうやってこれらの工場群を全体的にコントロールしているのか、考えれば考えるほど訳が分からなくなります。
 この本はカラー版ですから、実にカラフルに人間の身体を構成する細胞をことこまかく見せてくれます。たとえば脂肪細胞です。脂肪滴を取りかこむように細胞質があります。血液からの情報に応じて、また神経の刺激を受けて、敏捷に在庫の出し入れをしています。脂肪細胞はレプチンというホルモンを出す。肥満するとレプチンによるブレーキがかかるので、正常な人では多少食べても体重がほぼ一定に保たれる。
 肝臓を全部とり去ると、主人は死ぬしかない。しかし、10%も残せば主人は生き返ることができる。残った肝細胞は分裂・増殖して、大きな肝臓をつくる。そして、正確にもとの大きさに達すると、ピタッと細胞増殖が止まる。肝細胞は旺盛な再生力と、精密な自己抑制力を兼ねそなえている。
 視細胞の話のとき、寺田寅彦の「とんびと油揚」が話題になっています。ヒトでは直径2ミクロンの外節が1平方ミリに15万個。ところがタカでは、太さ1ミクロンの外節が100万個もある。だから、タカの視力はヒトの6〜7倍はある。これを考えたら、トンビはネズミを見つけるのは容易だ。こんな話が紹介されています。
 カラー写真を眺めているだけでも楽しくなります。また、人間って実に不思議な生き物だとつくづく考えさせてくれる人体の細胞図です。

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