弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年3月10日

憲法で読むアメリカ史

著者:阿川尚史、出版社:PHP新書
 アメリカの歴史を憲法をとりまくエピソードを紹介しながら語る面白い本です。福岡の藤尾順司弁護士に読むようにすすめられました。
 アメリカの先住民であるチェロキー族は銃をとってたたかう代わりに裁判所でたたかいました。白人の弁護士に依頼して裁判をすすめ、合衆国最高裁まで進んで勝訴したのです。ところが、現実には実力で土地から排除されてしまいました。しかも、勝訴はしたというので、白人の弁護士はチェロキー族に対して法外な弁護費用を請求したというのです。
 アメリカでは昔から黒人差別が根強いものであったことも証明されています。
 1857年の連邦最高裁は、黒人はアメリカ市民でないとして、次のように述べました。
 黒人は一段低い劣った人間であり、優勢な白人に支配されるべき存在である。彼らはあまりにも劣っているので、白人が尊重すべき権利を一切有していない。黒人が奴隷の境涯に置かれるのは、彼ら自身のためにいいことなのである。
 1858年夏、奴隷制度の存廃をかけてリンカーンとダグラスの2人が公開で対決討論しました。このときには、徒歩、馬、馬車、特別列車をつかって1万人が集まり、会場は立錐の余地もありません。聴衆は3時間立ちっぱなしでした。考えてみてください。マイクもスピーカーもない、肉声のみの討論なんです。聴衆は耳をそばだてて2人の演説を聞くしかありません。すごいことですよね。今なら1万人コンサートは珍しくもなんともありません。でも、マイクもスピーカーもアンプもなしで、地声のコンサートに1万人も集まるなんて考えらないことですよね・・・。

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー