弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年3月 4日

民営化される戦争

著者:本山美彦、出版社:ナカニシヤ出版
 いまアメリカは海外での軍事行動について民間会社を活用している。Private Military Companies(PMC)という。PMC全体で年間100億ドルの売上がある。最大のPMCは元将校を1万2000人もかかえている。彼らは、軍人恩給として退職時の50%が支給されるうえに、現役の軍人であったころの給与の2〜10倍ももらう。ペンタゴンがPMCに支払う金額は年間250億ドル。これは10年前の2倍。PMCの従業員は戦地での戦闘行為にも加わっている。
 したがって、これらの民間会社につとめる社員が殺害されるケースが増えている。しかし、民間人の殺害が増加する反面、制服の軍人の殺害が減っていることから、戦争したくないという心理的な壁を薄くしている。戦争行為をPMCが代行してくれるおかげで正規の軍隊や彼らを統括する上級閣僚たちが、血を流す兵士の惨状を見て厭戦気分に陥る可能性が小さくなっている。そこで、限定的な局地戦にはPMCが多く送りこまれる。制服の大部隊を投入しなくてもよいからだ。しかも、5000万ドル以下のPMCとの契約額ならペンタゴンは議会に報告する義務もない。
 戦場に参加する民間会社が忠誠を誓う相手は軍ではなく、株主である。彼らはカネだけで働くかつての悪名高い傭兵たちと同じ行動をとる。
 PMCのなかでは、ハリバートン(チェイニー副大統領の関係する会社)の子会社であるKBRが断トツの存在。ほかにディンコープ、ビンネル、MPRI、AOCOMガバメント・サービスなどがある。
 イラクの罪なき市民を大虐殺しながら、アメリカの企業が巨大な利益をあげているなんて、許せない。しかし、それも長続きはしないだろう。とはいっても、それまでに莫大な犠牲者が出るのを、私たち日本人は座視して見守るだけであってよいのだろうか・・・。

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