弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年3月 2日

永遠の子ども

著者:フィリップ・フォレスト、出版社:集英社
 4歳の娘が小児ガンにかかったとき、父親はどうなるか、いや、どうするだろうか・・・。小児ガンは、先進国では子どもの死因として、事故に続く第2位を占めている。
 脱毛は病気の印、死の定めの印である。髪の毛とともに、小さな女の子は名前も性別も失い、小児ガン患者と呼ばれるものになる。
 小説は、時間の森への切り込みである。小説は真実ではない。しかし、真実なしには存在しない。小説はぼくたちに手を差しのべ、目のくらむ一点の近くまで導く。
 死の悲しみは語らずにいられない。人は言葉を探す。なぜなら、言葉は、死者に対して考えられる唯一の施しだから。ぼくたちの娘の死んだ長い年は、ぼくの人生でもっとも美しい一年だった。
 ええっ、こんなに言い切れるなんて、すごいと私は思いました。
 病院の世界がもっとも恐れる伝染病は、絶望である。死者はまず、名前を持つ権利を失う。
 文学の評論を自分の仕事だとしていた著者が娘の死を体験し、小説を書きました。透明感あふれる文体です。訳者から贈呈されて読みました。フランス語を長く勉強していてめぐり会えた本です。日本語としてよくこなれた読みやすい訳文だと感心しました。

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