弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年2月15日

東京ゴールドラッシュ

著者:ベン・メズリック、出版社:アスペクト
 読むと不愉快になること間違いありません。私もいいかげんにしろと憤慨しながらも、なんとか読みとおしました。なにしろ事実が描かれているというのです。だから、目をそむけるわけにはいきません。アメリカのプリンストン大学を卒業した優秀な青年が日本にやってきて、国際的な証券取引のなかで、たちまちのうちに荒稼ぎをします。3分間で600億円もの利益をあげるというのです。どんな世界なのでしょうか。想像もつきません。27歳の青年が60億円ものボーナスを手にして引退していくというのです・・・。
 毎週140時間の勤務。昼休みなし、夕食時間は10分。人間扱いはされない。上司を恨み、同僚を恨み、最後には自分さえ恨むようになる。最初の1年は地獄以外の何ものでもない。しかし、そこをかじりついて耐え抜けば、2年目には基本給は15万ドル。その後、さらに年俸200万ドルも夢じゃない。
 そんなに稼いだお金を彼らは何に使うのか。この本には、新宿歌舞伎町や六本木の性風俗店に出入りするアメリカ人の生態が生々しく紹介されています。そして、この性風俗店と金融界とのあいだに陰に陽に橋渡しをしているのが日本のヤクザなのです。
 いま私が扱っている刑事事件では、筑後地方のしがないヤクザが、なんと東京に事務所を構えて何十億円もの資産をもって旺盛にヤクザ稼業を展開しているという話が出てきます。いったい何をしているのか興味津々なのですが、その舞台のひとつが、このようなボロもうけする金融取引なのでしょうね。
 ヤミ金で巨利を得た連中が、スイス銀行に50億円を預けていたという話は有名ですが、やくざな世界のグローバル化は私たちの想像以上にすすんでいるようです。
 それにしても、せっかく有名大学を出て、こんなカネ、カネ、カネとあくせくして、そのあげくが性風俗店だというのでは、アメリカの将来はありませんよね。27歳で60億円もってバミューダに引退したあとの人生って、いったい何が楽しいんでしょうか・・・。お気の毒さま、と私は声をかけてやりたい気分です。もっとも、彼らからすると、余計なお世話だということなんでしょうね。

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