弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2005年1月17日

アメリカ帝国の悲劇

著者:チャルマーズ・ジョンソン、出版社:文芸春秋
 著者は、現在の軍事偏重の一国主義敵傾向が今後も続くようであれば、アメリカは4つの悲劇に見舞われるだろうと警告している。たえまない戦争、民主主義の崩壊、真実の隠蔽、そして財政破綻である。
 アメリカ国民は、地球のほかの国々に住む人々とちがって、アメリカが軍事力で世界を支配していることに気づいていない。政府の秘密主義のせいで、アメリカ国民は多くの場合、自分たちの政府が全世界に軍事基地を置いていることを知らない。アメリカは、実際には50万人以上の兵士やスパイ、技術者、教師、家族、民間の請負業者を全世界の国や海に派遣している。
 18歳から24歳までのアメリカの若者数千人を、彼らがまったく知らない異質の文化のなかに駐留させれば、基地を受けいれた国を悩ます事件が次々に起きるのは当然の話だ。アメリカ兵は「給料をもらいすぎて、性欲過剰の、よそ者」とからかわれたことがある。
 アメリカ陸軍は48万人、海軍は37万人、空軍は36万人、海兵隊は18万人の兵員を有し、トータルで139万人の男女が兵役についている。支払われている給与総額は、陸軍271億ドル、海軍と空軍がそれぞれ220億ドル、海兵隊は86億ドル。
 世界をつねに軍事力で支配するのはお金がかかる。2003年度のアメリカの軍事予算は3548億ドル。2004年度は4000億ドル近い。ロシアの予算はアメリカの14%にすぎず、第3位以下の上位27国の軍事予算を合わせて、やっとアメリカの軍事予算と同じになる。
 最初の湾岸戦争に610億ドルかかったが、日本が130億ドルを負担したりしてくれたので、アメリカ自身は70億ドルですんだ。
 戦争で暴利をむさぼるのは、ドン欲な民間人だと思うかもしれない。しかし、それは外国人に武器を売ってまわるうえで制服の軍人が果たしている役割を軽視している。
 国防受注企業には税制上の優遇措置がとられている。武器セールスの有力な方法は戦争だ。戦争は在庫を減らし、世界中の潜在的な顧客に、新世代のアメリカの武器の性能をデモンストレーションするという特徴がある。
 アメリカの軍産複合体は、ユーゴやアフガニスタン、イラクに対する戦争を商売に役立つとして歓迎した。アメリカの精密兵器といっても、実は多くが目標をはずしており、「敵」の陣地の半分以上がアメリカの空飛ぶ目に探知されていない。
 1991年以来、アメリカは世界最大の軍需品輸出国として、2位以下を大きくひき離している。アメリカは450億ドルの武器を輸出し、第2位のロシアは半分以下の174億ドルである。アメリカは武器を訓練して売る。
 アメリカが世界中に保有している基地の価値は1180億ドル。うち日本が400億ドル、ドイツが380億ドル。日本には5万人近い制服組の軍人がいて、4万人ほどの家族がすんでいる。日本人を3万人ほど雇っている。ところが、日本は毎年40万ドルをアメリカに支払っている。日本は、ほかの国にお金を支払って、自分をアメリカにスパイさせている珍しい国だ。
 アメリカには大きな民間軍事会社がある。その大半が特殊部隊の退役高級将校と退役隊員であり、政府や同盟国に雇われて、兵士の訓練をふくむ多くの軍事任務に就く。社員数2万3000人(ダインコープ)、4500人(キュービック)など。1万人の退役軍人を必要に応じて確保できる会社もある。民間軍事会社と民間契約業者は世界中に700以上もある。アメリカの軍事基地を運営するうえで欠かせない存在になっている。
 アメリカがまたもやアルカイダの報復テロ攻撃を受けるのも間近だと言われています。もちろん、そんなことがあってはなりません。しかし、最近のイラクのファルージャでのアメリカの残虐な攻撃を見ていると、あってはならないことが起きてしまうのではないのか。そんな心配が胸中から離れません。

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