弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年12月28日

虎の城

著者:火坂雅志、出版社:祥伝社
 藤堂虎高というと、一般にはあまり評判は良くない。戦国時代末期、徳川時代まで、激流のなかをうまく泳ぎ切ったことから、その変わり身のはやさに、風見鶏とか裏切り者と呼ばれた。同時に、江戸城をはじめとする多くの名城を手がけた築城家でもあった。乱世をくぐり抜けた武士というより、算術(経済)を兵站にたけた武士だったのだろう。
 人を信じることが、ほかの何にもまして肝容。上に立つ者が下を疑うなら、下も上を疑う。すると、上下の心は離反し、その隙に姦人が讒言する。結果として、有能な人材は失われ、やがて乱れてしまう。なかなかするどい指摘だ。
 フィクションというけれど、事実をふまえてストーリーが展開していくので、歴史書としても十分に読める。

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