弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年12月27日

樋口一葉・いやだと云ふ

著者:田中優子、出版社:集英社新書
 明治の初め、19歳で小説を書きはじめ、24歳で亡くなった偉大な女性がいた。
 有名な『たけくらべ』は、1895年(明治28年)、樋口一葉が23歳のとき連載をはじめ、翌年4月に一括発表されて絶賛をあびた。そして、その年の11月23日、一葉は24歳で亡くなった。
 著者は、樋口一葉は小説家になりたかったのではなく、相場をはってお金もうけしたかったけれど、それがかなわず、あきらめて小説を書いた。一葉は、挫折と無念のなかで死んだ。このように解説している。一葉は現実を直視し、逃げなかった。しかし、我慢もしなかった。「いやだ!」を全面的に拒否した。
 一葉は、いつもお金に困っていた。そして、たくさんの人、主として男性に、お金を無心していた。借りたお金は、ほとんど返していない。一葉は、貸してくれたお金に感謝したり、恐縮するのではなく、思ったより少ないと腹をたてた。そして、貸すと約束していながら貸してくれなかったときには怒りが爆発した。
 紙幣にまで登場する樋口一葉を、もう一度、読み返してみたくなった。

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