弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年12月24日

英仏百年戦争

著者:佐藤賢一、出版社:集英社新書
 佐藤賢一は『王妃の離婚』や『カルチェ・ラタン』、『双頭の鷲』など、どれも中世ヨーロッパを舞台にした小説を書いていますが、その博識とストーリーの面白さに、どれも感嘆して読みました。今度は、この本でヨーロッパ史の裏側を知ることができた思いです。
 イギリスといい、フランスといい、実は英仏百年戦争までは、大陸フランスの貴族の争いであったというのです。ああ、そうだったのか・・・、と初めて知りました。イングランド王国はフランスのノルマンディ公の属国でしかなかったのです。
 そして、ヘンリー4世まではイングランド王は実はノルマンディ公であり、アンジュー伯であり、大陸の領土を奪われても、相変わらずフランス人だった。王侯貴族は母語としてフランス語を話し、英語はイングランド庶民の言葉でしかなかった。ところが、ヘンリー5世はフランス語が話せず、イングランド人として即位した初めてのイングランド王だった。
 英仏百年戦争が終わったとき、それぞれ初めて中央集権国家が誕生し、フランス人、イングランド人が生まれた。イングランド王はフランス人であることをやめ、外国である大陸の領地に固執しなくなった。
 うーん、そうだったのか・・・。シェイクスピアの『ヘンリー5世』のアジャン・クールの戦いのことも触れられています。まとまりのないフランス貴族連中の軍を統率のとれたイギリス軍が圧倒した戦いです。なるほど、なるほど、とまたもや思いました。
 私はフランス語の日常会話はなんとか話せます。11月に受験した仏検1級は不合格でしたが、71点とることができました(合格点101点、150点満点)。30年も続けていてこの程度ですから、まるでたいしたことはないのですが、それでもフランス語を聞いてかなり分かるのがうれしくて毎日、仏和大辞典を愛読しながら続けています。

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