弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年11月15日

経済成長がなければ私たちは豊かになれないのだろうか

著者:C.ダグラス・ラミス、出版社:平凡社ライブラリー
 日本政府は前文と憲法9条の政策を今まで一度も実現しようとしたことがない。一貫してアメリカ軍が日本にいて、日本の軍事防衛はアメリカの軍事力に頼っている。「核の傘」のなかに入っている。だから、日本はまだ前文と第9条の平和主義を試したことがない。
 日本政府は本当の意味での平和外交をやったことがない。中立であったこともない。
 アメリカは次々に戦争を起こしてきたけれど、その敵は、いつも日本の敵にもなった。日本は一貫してアメリカの同盟国としてつとめてきた。
 国家は誰を殺しているのか?
 自分の国民しか殺さない軍隊をもっている国はたくさんある。20世紀は戦争の世紀だったが、もっとも多く人が殺された戦争は、国家間の戦争ではない。国家が殺した2億人のほとんどが戦闘員ではなかった。
 憲法とは、政府に対する国民の命令なのである。
 前文は、「日本国民は」という主語に始まり、憲法の本文は、政府がやっていいことと、やってはいけないことが細かく書かれている。主権在民憲法とはそういうもの。国民は政府に交戦権をもたせないようにした。
 奴隷の定義は余暇のない人間である。
 となると、今の日本社会はどうなのか。勤務時間外にほとんど暇がない状態が日常的だとしたら、我々は奴隷と同じことではないのか。
 経済成長至上主義は、もう止めるべきだ。ずい分前からそう言われてきました。しかし、まだまだ成長率を競っている社会です。著者は、一刻も早く頭を切りかえる必要があると強調しています。私も同感です。

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