弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年11月10日

山田洋次×藤沢周平

著者:吉村英夫、出版社:大月書店
 映画『隠し剣、鬼の爪』を封切り日にみた。満席とは言えないけれど、中年というより老年の男女で席はかなり埋まった。スクリーン一杯にしっとり落ち着いた映像が広がり、たちまち江戸時代末期の海坂藩に居合わせた気分になる。
 『たそがれ清兵衛』の真田広之もよかったが、今度の永瀬正敏もなかなかのものだ。東北の山々の遠景がロングショットで登場する。雪をいただく月山の雄姿だ。『阿弥陀堂だより』で信州の自然が丹念に紹介されたのを思い出す。この風景を見ただけでも、忘れかけていた幼いときの原体験に戻ることができて、なんとなくトクをした気分になる。
 山田洋次監督は映画『ラストサムライ』をみていないという。『ラストサムライ』では、新式の大砲や銃によってカツモト軍が倒される。今回の『鬼の爪』では、東北の田舎の藩でも新式銃を取り入れ、西洋式の軍隊に訓練している光景がコミカルに紹介されている。昔の人は両手を大きく振って足をあげて歩くことができなかった。すり足で歩いていたのだ。昔の人が着崩れしなかったのは、上半身を動かさず、下半身だけで動いていたからだ。うーん、なるほど・・・。
 斬り合いのシーンは真に迫っている。演じた役者は本番前に何度もケガをしたという。 藤沢周平は、いまブームだ。どれも似たようなパターンだが、それでも『男はつらいよ』シリーズと同じで、強く魅きつけるものがある。こんないい映画はぜひ多勢の人にみてほしいと思う。映画を興行的にヒットさせれば支持の表明になる。映画は文化だ。ぜひ、映画館へ足を運んでほしい。

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