弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年10月 1日

ほかの誰でもない私をさがして

著者:志賀こず江、出版社:講談社
 頭が下がりました。私と同世代、つまり団塊の世代の女性弁護士が生いたちから今までの自分を、実にあからさまにさらけ出しています。大変な苦労だったと推察しました。それでも、ジメジメしたタッチで描かれていないところに救いがありました。
 親の経済的な行き詰まりから、大学へ進学できずJALのスチュワーデスになります。しかし、どこか自分にあわないものを感じ、結婚もして退職。親の面倒を見ながら通信教育で学び、慶応大学を卒業。でも、それではあきたりません。一念発起して司法試験をめざします。13回の挑戦で、ついに合格。13年間、主婦業をやりながら司法試験をめざした著者の粘り強い努力にほとほと脱帽しました。しかも、病気の親や夫をかかえ、その面倒をみながらなのです。すごいものです。並みたいていの努力ではありません。同世代でありながら、ぬくぬくと勉強に専念できたことが恥ずかしくなってしまいました。
 著者は横浜での5年間の検事生活のあと、いまは東京で弁護士をしています。犯罪被害者支援活動にも取り組んでいるそうです。大阪の大平光代弁護士の本(『だから、あなたも生き抜いて』)にも心を揺さぶられましたが、この本にも深い感動を覚えました。つくづく、女性は弱い、されど女性は強い。そう思いました。

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