弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年9月 1日

9.11ジェネレーション

著者:岡崎玲子、出版社:集英社文庫
 アメリカ留学中の日本人女子高生の体験記です。えっ、本当に女子高校生が書いたの・・・。読んで、思わず驚きました。あまりにも大人の言葉なのです。すごい・・・。次の言葉が、しばらく見つかりませんでした。
 15歳でアメリカの私立高校・チョート校に入学して2年目に、9.11を体験しました。アメリカが日に日に好戦的になっていく様子を冷静な目で批判的に伝えてくれます。
 キャンパスでは、湾岸地域でアメリカ軍が大々的に展開してイラク攻撃の可能性が現実味をおび始めたころから国家政策を支持する人が増えていった。クラスメイトが、アメリカ軍の威信を傷つけようとする非戦主義者は、アメリカ人として罰当たりだと熱弁をふるう。アメリカ軍に水をさす者には、「非国民」のレッテルが貼られ、反戦の意思表示が一段と困難になった。FOXテレビはブッシュ大統領を絶対的に支持し、センセーショナルで楽観的な戦争報道が人気を集め、CNNを視聴率で上まわった。アメリカ軍が劣化ウラン弾を使用しているという報道はアメリカでは見かけない。ピンポイント爆撃で戦いが実現されるという宣伝を、人々は信じてしまった。
 アメリカの国家政策に異論を唱えれば、「非国民」とか「スパイ」と中傷され、外見や名前がステレオタイプにあてはまる人物が誰でも反逆罪を犯すかのように逮捕される。これはアメリカが批判する抑圧的な政権下でこそみられそうな風潮だ。
 うーん、すごい・・・。素直に、若者に学ぶしかないと白状します。

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