弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年9月 1日

夜のある町で

著者:荒川洋治、出版社:みすず書房
 私と同世代の詩人によるエッセー集です。さすが詩人だけあって言葉の力を大切にしている人なんだということが、よく分かります。
 詩の朗読を著者は否定しています。すぐれた詩には、その文字のなかにゆたかな音楽が、音楽性があるから、それで十分。朗読は詩から文字要素を捨てさってしまう。だから反対するのです。
 朗読をはじめると、同音異義語など、耳にやっかいな表現を排し、耳に届くとろけた言葉を好んで使って書くようになるので、言葉も思考もやせほそる。朗読詩人は、知名度を高めたが、詩の質量は落とした。朗読会で、詩人は自分の作品だけを読む。自己顕示、自己広報、自己陶酔が目的だ。
 コトバを大切にする人は、文字も大切にするんだと思いました。目で見た文字も、やはりコトバの生命なのです。

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