弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年8月 1日

幕末の天皇

著者:藤田覚、出版社:講談社選書メチエ
 私は自分の無知を恥じました。私も「万世一系」の天皇という事実に反すると思っています。しかし、人々はずっと天皇と呼んできたとばかり考えていました。ところが、江戸時代の人々にとって天皇という言葉はまったくなじみのないものだったのです。「主上」とか「禁裏」と称し、正式の文書にも「・・・院」とされていたのです。10世紀末の62代・村上天皇を最後として、120代の光格天皇までの57代900年間、天皇という言葉は正式にも使われていなかったというのです。ええーっ・・・、本当に私は驚きました。天保11年(1840年)、光格上皇が死んだとき、光格天皇とおくられたので、江戸でも京都でも人々が一様にびっくりしました。
 さらに、元号と天皇をくっつける制度は明治天皇に始まったもので、それ以前はありませんでした。明治、昭和、平成とわずか3代の歴史しかないのです。
 天皇を頂点とする公家集団としての朝廷は、江戸時代中期には約10万石の藩という経済的実力をもっていました。
 江戸時代は、文書の宛先に対して「様」とするか「殿」とするか明確な違いがありました。「様」の方が「殿」より尊敬したいい方でした。書式上は、天皇と将軍は同等という扱いだったのです。なるほど、なるほど・・・。

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