弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年8月 1日

やわらかな遺伝子

著者:マット・リドレー、出版社:紀伊国屋書店
 オビにこう書かれています。遺伝子は神でも、運命でも、設計図でもなく、時々刻々と環境から情報を引き出し、しなやかに自己改造していく装置だ。
 ヒトゲノムの解読から、ヒトは3万個の遺伝子からできていることが分かりました。たった3万個で人間のすべてが設計できるのか・・・。
  統合失調症患者が名家や頭のいい家系にあらわれることには、昔から多くの人が気づいていた。精神病の傾向がある人々を断種すると、多くの天才も抹消することになる。軽度の障害のある人、統合失調症型人間とも呼ばれる人は、並外れて賢く、自信と集中力があることが多い。ニュートンもカントも、今では統合失調症型とされている。
 教育とは、結局、頭に知識をいっぱいに詰めこむことではなく、生きていくうえで必要な脳の回路を鍛えあげることだ。鍛えあげることで、脳の回路は自在に動く。
 脳がなく、ニューロンが302個しかない線虫のような生物でも社会的経験の恩恵をこうむるのなら、人間の教育では、そうした経験の影響は、はるかに大きなものになるだろう。哺乳類では、幼いころに社会的な経験が豊富だと、その行動に長期的で
不可逆な影響がもたらされる。
 双子の研究では、家庭環境は離婚にまったく影響しないことが明らかになっている。一卵性双生児の片方が離婚すると、もう片方も離婚する割合は45%になる。つまり、離婚する可能性のおよそ半分は遺伝子によってもたらされ、残りは環境によってもたらされるわけだ。
 公平な社会では「生まれ」が強調され、不公平な社会では「育ち」が強調される。つまり、社会が平等になればなるほど、先天的な要因が重要になる。だれもが同じ食料を手に入れられる世界では、背丈や体重の遺伝性が高くなる一方、一部の人が贅沢に暮らし、ほかの人々が飢えているような世界では、体重の遺伝性は低くなる。
 うーん、いろいろ考えさせられます。要は、遺伝子がすべてを決めるというわけではないということです。

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