弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年8月 1日

幻獣ムベンベを追え

著者:高野秀行、出版社:集英社文庫
 15年前の本を復刻した文庫本です。早稲田大学探検部のいかにもナンセンスなアフリカ探検記でしかありません。でも、なぜか、読み出すととまりません。えーっ、こんなバカなことやるの・・・、と思いつつ、次はどうなるのか、彼らがどういう運命をたどることになるのか、知りたくてたまりません。
 時間がたっぷりあって、好奇心を抑え切れない。そんな若者たちの体臭がムンムンして、ついつい憧れてしまうのです。ああ、私にも、かつては時間の過ぎるのをちっとも気にせず、こんなバカなことをしていた時代があったなー・・・、なんて思ってしまいました。まさに、大学生というか若者の特権です。でも、そんな特権は大切にしてやらなくてはいけない。いま、私はつくづくそう思います。ハーティンワークに追われて、くたびれた大人の発想だけで世の中が動いていったらたまりません・・・。
 ところで幻の怪獣ムベンベはどこにいるのか・・・。コンゴ人民共和国(当時)の奥地テレ湖にいるというのです。では、探検隊は会えたのか。もちろん(?)、会えませんでいた。この本は、怪獣に会えたかどうかではなく、その過程で何が起きたのか、若者たちがそれにどう対処していったのかが面白いのです。
 ワニの肉は美味しい。かむと歯ごたえがあり、飲み込むと鶏肉のささ身そっくり。スープも素晴らしい。ゴリラを地元民は愛好している。もちろん食べるという意味だ。
 そんな体験をした若者たちが、18年たって今何をしているのかも明らかにされています。うち2人はマスコミに入ったそうです。無茶をしなければ若者じゃない、ということを久しぶりに思い出した本でした。

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