弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年8月 1日

昭和史の決定的瞬間

著者:坂野潤治、出版社:ちくま新書
 2.26事件がひどく寒い日に起きたことはもちろん知っていました。しかし、同じ年の2月20日、つまり1週間前に総選挙があり、自由主義的な民政党が78議席も増やし(反対に政友会が71議席減)、左派の社会大衆党ほかが17議席も増やしていたことはすっかり忘れていました。しかも、翌年4月30日の総選挙では、左派の社会大衆党はさらに36議席へと躍進していました。民政党は204議席から179議席へと減り、政友会は171議席が175議席に微増です。
 日中戦争が迫りつつあるなかで、戦前の社会主義政党は少数党から躍進を続けていた。日本国民は日中戦争のはじまる直前までデモクラシーを求めていて、左派による政治改革を支持していたとみることができる。著者は、そう強調しています。なるほど、そういう面もあったのかと思い直しました。
 昭和12年1月に宇垣一成に組閣の大命があったのは、二大政党の支持を得た「協力内閣」づくりをめざすだった。しかし、軍部独裁を狙った陸軍はそれを挫折させてしまった。ただし、宇垣の「平和」重視というのは、英米両大国との強調を重視し、それが守られるのなら日本の領土拡張に賛成する、というものではあった。
 なるほど、なるほど。まだまだ知らないことは多い。つくづく、そう思いました。

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