弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年8月 1日

花の谷の人びと

著者:土本亜理子、出版社:シービーアール
 房総半島の南東にある小さな海辺の町に実在するホスピスのある診療所のお話です。
 院長をふくめて医師は3人、看護師11人、介護スタッフ3人、事務3人、栄養士1人、調理スタッフ5人、それに庭師1人。診療所にはホスピスが10室、14ベッド。
 読んでいるだけで自然に心がなごんでくる、患者を人間として大切にする小さな診療所です。食事ひとつとっても、あたたかいご飯を食べられるように工夫されています。
 こんなんで経営が成りたつのだろうかと他人事(ひとごと)ながら心配させられます。 でも、こんな診療所がオープンできたのも地方の多くの人々の善意に支えられた、奇蹟みたいなものでした。人生の最期をゆったりと過ごせる環境をつくりあげるには、いま猛烈に生きている人々が、少し歩みを緩めるしかないように思います。どうでしょうか。お互いの足のひっぱりあいしかない社会では、心にゆとりが生まれるはずもありませんよね。

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