弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年7月 1日

法律相談のための面接技法

著者:菅原郁夫、出版社:商事法務
 私はときどき法律相談で大失敗をしてしまいます。相談者の期待に反した答えをしたから怒られたのではありません。私の言い方に腹を立てたのです。自分でも分かりました。いかにも相手を突き放した口調で、冷たく「そんなこと認められませんよ」みたいに言い放ったのです。一方の私は、こんなことを言ったら相手は怒るだろうなと思いつつ、もう一方の私が、ダメなものはダメなんだからキッパリ言ってやった方が相談相手のためにもなるんだと思ったのです。私は、くり返しダメな理由を説明したのだから、自分への慰謝料のようなつもりで、相談料5千円を当然のように請求しました。相談にきた女性(みな女性でした)は怒りました。あとで怒りと非難にみちた手紙を送ってきた女性がいます。私も、そのときには反省する心をとり戻していましたから、それなりに丁寧にお詫びの言葉を書き、相談料5千円を同封して返しました。
 この本は弁護士が相談者に対していかに接すべきか、基本を説いています。
 相手の心情に対して弁護士も共感を示す。質問は決して糾弾的になってはならない。できるだけゆっくりとした口調で、短く区切った質問をする方が効果的だ。法律相談でカウンセリング的対応をするためには、共感、受容、傾聴の3要素が重視される。相談者と弁護士という二人の人生が相談室で出会うと考えるべきだ。そこで弁護士は、相談者の人生の悩みや紛争を通して間接経験として学ばせていただいているという謙虚さが求められる。
 やはり、ときどき初心というか原点に帰ることが大切だと改めて思いました。

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