弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年7月 1日

シルクロード路上の900日

著者:大村一朗、出版社:めこん
 西安からローマまでの1万2000キロを陸路ひたすら歩いた日本人青年の記録です。西安を出発したのが今から10年前の1994年6月14日。ローマにたどり着いたのが、なんと2年5ヶ月後の1996年11月6日。そして、7年かかって、その旅行記を完成させたのです。うーん、すごい。
 さすがに速読を誇る私も、一歩一歩たどるように活字を追っていく心境になりました。なにしろ、雨にうたれてトボトボ歩いて青年の姿を哀れんで、何台もの車がとまって「乗っていけ」というのを、心を鬼にして全部断り続けたのです。
 もちろん、著者は怖い思いを何度もしています。それでも、ああ、人間って、こんなに心のあたたかい人が一杯いるのか。読み手の心まで温ためてくれるシーンが何度となく登場してきます。世の中には、民族の違いはあっても、人間としての心の優しさは共通しているんだな。そう思わせてくれる、いい本でした。
 今、著者はテヘラン大学に留学中とのことです。こんな大変なことをやり遂げた青年が同じ日本人にいることを知って、私までうれしくなりました。今はやりの自己責任論の原点がここにあると思います。

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