弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年7月 1日

素顔のスペシャル・フォース

下、著者:トム・クランシー、出版社:東洋書林
 アメリカ軍の特殊部隊についての取材ルポです。「戦場におけるマスコミ」というのが陸軍全体のプログラムになっています。ベトナム戦争でマスコミが「自由に」報道したことから戦場の真実が報道されてベトナム戦争に反対する世論が高まっていった「失敗」の教訓にアメリカ軍は学んでいるのです。戦場にいる兵士たちにマスコミに応対する準備をさせるよう計画されたものです。レポーターをうまく扱うのは、兵士にとって戦闘ほどではないにしても、重要な意味をもつ。軍隊はCNN効果(何かが起きれば、世界中の人々の注目を集める)と対峙しなければならない。これでへまをやらかせば、犠牲は大きい。どんな質問に対しても、冷静に対応する。これを学んでいくのです。
 驚くべきことに、2005年にインドネシアでクーデター勢力がパキスタンから密輸した小型核兵器を爆発させたという前提でのシュミレーションまで紹介されています。被爆国になっていないアメリカには、放射能汚染の恐ろしさが今も全然分かっていないのです。
 特殊部隊といっても、結局は人間が決めるんだ。兵器万能ではない。著者はその点をくり返し強調しています。いくら衛星によるGPS受信機や完全な地図を持っていても、やることが多すぎて疲れた人間の失敗を克服することはできない。なるほど・・・です。

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