弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年7月 1日

歴史のなかの新撰組

著者:宮地正人、出版社:岩波書店
 本当に知らないってことは恐ろしいことなんですよね。私は、新撰組なんて単なる野蛮な人殺し集団であり、近藤勇って、知性のカケラもなく、保守思想にこり固まっただけの頑愚な男だから、偽名をつかって逃亡中に流山で捕まって首をはねられたのも身から出たサビだと思いこんでいました。
 この本を読んで、私の思いこみが完全に間違っていたことを思い知らされました。小説レベルで歴史をみてはいけないのですね。うーん、なるほど・・・。近藤勇は単なる暴力集団の親分ではなく、社会を見る目をもち、理論的にも一貫した主張をしたので、一橋慶喜などから絶大な信頼を得ていた存在だったのです。そして新撰組は、江戸末期、武士が頼りにならなくなった現実をふまえて、豪農層や中農上層部から剣客が続々と輩出していましたが、彼らによって構成されていた剣客集団なのです。しかも、情報収集能力にすぐれていました。闘い方にしても、やみくもに無謀な一騎うちなんかではありません。
 新撰組の闘い方は、いつもきちんとした正攻法だ。多人数で囲み、相手を疲労させたうえで殺害する。味方には死者を出さない。新撰組のおかれていた歴史状況がきちんと描かれ、内部矛盾も鋭く分析されています。
 新撰組とは何だったのか、改めて考えさせてくれる本でした。

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