弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年7月 1日

グローバリゼーションから軍事的帝国主義へ

著者:大西広、出版社:大月書店
 大変知的刺激を受けた本でした。
 イラク戦争において、アメリカは実は敗戦した。著者は、このように断言しています。戦争に勝ったと言えるためには、その戦争を支えるだけの国力をもっていなければならない。しかし、アメリカは、財政赤字を3000億ドルから4500億ドルへとふくらませてしまった。
 とどまるところを知らないアメリカの貿易赤字は1.5兆ドルをこえている。これは金利を年率5%として毎年750億ドルの金利返済ができなければ、債務が無限に膨張することを意味している。根元的な資金不足国家が長期に国際金融の中心を担うことはできない。
 世界の資金をアメリカに流入させるために、アメリカは無理してドル高政策をとっている。ドル高政策は、アメリカの製造業に打撃を与え、ただでさえアジアの急追に悩むアメリカの基礎的な工業基盤の弱体化を加速させた。アメリカにとって、世界の「ドル離れ」を阻止できるかどうかがアメリカの生死を決める。アメリカは「国際通貨ドル」を絶対に守らなければならない。イラク原油がユーロ建てになっては困るのである。中東原油に依存する日本や中国などの東アジア諸国の決済通貨がユーロ化してしまえば、「ドル体制」の終焉を意味する。 原油のユーロ建てを企てたベネズエラのチャベス大統領がクーデターによって追放されようとしたのも、アメリカの意図が反映されていた。イラクのフセイン攻撃も同じ脈絡でとらえられる。なるほど・・・。
 このほか、北朝鮮や中国についての分析も興味深いものがありました。

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