弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年6月 1日

ロングフェロー日本滞在記

著者:チャールズ・A・ロングフェロー、出版社:平凡社
 明治の初めにアメリカから陽気なアメリカ人の青年が日{にやってきました。北海道から九州まで旅行し、東京に家を買って住みつくほど日本を気にいってしまいました。
  アメリカの大詩人ヘンリー・ロングフェローの息子ですから、お金には困りません。せっせとアメリカの家族へ手紙を書いて日本の様子を知らせます。写真もたくさんとっています。日本の様子がよく分かる写真です。たくさんの写真をながめるだけでも、明治の初めの日本の様子が分かってうれしくなります。
  日本の若い芸者たちの写真がたくさん紹介されていますが、笑顔を見せているのは珍しいそうです。現代日本にもいそうな美人です。130年ほど前の日本人ですから、それほど違うはずもないのですが、あまりに今風なので、びっくりしてしまいました。
  日本人ほど芝居小屋や茶屋で楽しむことを知っている国民はいない。服をほとんど脱いでしまい、すっかり寛ろいでタバコをくゆらしたりしゃべったり、食べたりしている。
  日本人は貧しい物乞いの前を素通りすることなどまずない。たとえわずかな金額でも、そこには善意が感じられる。
  明治政府の役人たちは半分以上が道ばたで拾われて、政府のために悪知恵を働かせ悪事を働いたために高い地位を手に入れた。だから、小役人は嘘つきの名人だ。日本人は多かれ少なかれ嘘をつくのが得意だ。
  明治天皇が20歳だが、見たところは30歳のようだ。その顔立ちは極めて日本的で、大きくて平たい鼻、黄ばんだ肌の色。そのまなざしは鋭く輝いていた。あのような顔は江戸の町でたびたび見かけた。衣裳はいたって簡素だ。話すときは決して口を大きく開かず、歯の間から言葉をつぶやくだけ。我々の方をまっすぐに顔を見て話す。優しい慈悲深い表情だ。しかし、口を閉じると、たちまち威厳のある、まじめでむしろ無表情な顔になった。
  明治天皇の表情をじかに見た人の描写を初めて読みました。映画『ラスト・サムライ』に明治天皇も登場していましたが、ロングフェローの描写のとおりだな、私はそう思いました。

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