弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年6月 1日

イラク便り

著者:奥克彦、出版社:産経新聞社
 殺された奥参事官(死後、大使)が外務省のホームページに「イラク便り」を連載していたというのを私は知りませんでした。イラクへの人道的な復興支援が大切なこと、そして日本をふくめてNGOの役目がとても大きいことがきちんと紹介されています。国連の機関とともにボランティアが活躍しているし、大きな役割を果たしていることが、現地ではよく見えたようです。
  真面目な人柄が伝わってくる「便り」です。まったく惜しい人が大いなる「誤解」から殺されてしまったものです。残念です。でも、イラクの人々からすると、アメリカ軍の片棒をかついでいる日本は、まさに占領軍の一員であり、敵でしかないのだと思います。自衛隊を派遣している日本の私たち日本人は、イラクの人々からみると加害者以外の何者でもない。私たちは、今、そのことを大いに自覚しなければいけないのではないでしょうか。
  ところで、奥「大使」たちを殺したのはアメリカ軍ではないかという疑惑が依然としてくすぶっています。アメリカ軍も日本政府も、きちんと疑惑を解明しようとしてはいません。たとえば、奥「大使」たちの乗っていた車の銃撃角度です。果たして現地の「テロリスト」によるものなのか。本当はアメリカ軍がやったのではないのか、という点です。
  アメリカ軍は「テロリスト」の犯行と決めつけていますが、必ずしも信用できる説明にはなっていません。そもそも「テロリスト」が犯行というのにも疑問があります。アメリカ軍に反抗している地元勢力を「テロリスト」と呼んでいいものなのでしょうか。
  奥「大使」のメッセージが素直に読めるだけに、イラクの人々の置かれている現実の複雑さを考えさせられます。

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