弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年5月 1日

日本海海戦かく勝てり

著者:半藤一利、出版社:PHP研究所
 ひとつくれよと露にゲンコ。今から100年前の1904年(明治37年)、日露戦争が始まりました。日本海海戦は1905年5月、対馬沖でたたかわれ、東郷平八郎のひきいる連合艦隊がロシアのバルチック艦隊に完勝しました。
 この本は、この日本海海戦の真相を追求しています。有名な丁字戦法は使われていなかった。併航戦法がとられ、日露両軍の士気の違いで勝利した。機雷をロープでつないだ連繋機雷を新兵器で使おうとしたが、それも波が高くて使えなかった。天気晴朗なれど波高しという電文の真意は、波が高いので、連繋機雷作戦は多分できないだろうと軍司令部に通報したのだ。そんな驚くべき新事実を解明しています。
 軍の機密保持と東郷長官を神格化するなかで、誤った宣伝がなされたというわけです。まさしく政府の情報操作です。
 また、私は203高地の攻略作戦の意義を初めて知りました。『坂の上の雲』にも出てくる有名な秋山参謀は、「旅順の攻略に4、5万の勇士を損ずるも、さほど大なる犠牲にあらず。彼我ともに国家存亡に関するところなればなり」としているそうです。
 乃木希典大将が203高地で無謀にも強行突撃をくり返し、何万人もの大量戦死者を出したのは有名な話ですが、それにはこんな背景があったのですね。ところが、203高地を占領してみると、旅順港のロシア艦隊は既に日本軍の砲撃でみな沈没していたというのです。結果的には、203高地の占領は必要なかったというわけです。
これも知りませんでした。とかく戦争には隠された部分が大きいと思いました。
 国民は政府の情報操作によって、政府の思うように踊らされることが多いのは、先日のイラクの人質バッシングを見てもよく分かります。情けないことです。

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