弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年4月 1日

終わりなきアメリカ帝国の戦争

著者:デイナ・プリースト、出版社:アスペクト
 少しばかり重い気分になって最後まで読みとおしたところ、著者がアメリカの女性ジャーナリストだというのを知って、目を見開かされました。それまで、てっきりボブ・ウッドのような男性ジャーナリストだと思いこんでいたからです。アメリカの支配層、とくに将軍たちの思考パターンがよく描けていると感心しながら読みました。
 シンク・タンクの予測によると、これから予想される戦争はローテクの武器による無差別な戦争だ。自爆テロや有毒ガス・殺人ウィルスが武器となり、ドラッグやダイヤモンド、ダーティーマネーが世界的なテロ組織の資金源となる。
 それを予防するには、多国籍の近隣住民による警戒と密告グループが地域的国家連合を結成して、悪いやつがさまよいこんできて愚かなことをしでかさないように警戒するしかない。それは軍事というより、民政・外交の分野だ。
 かつてアメリカが絶縁しようとした独裁者たちが今やアメリカの支援を受け、かつては狂人として排除した反徒や軍閥たちを、今度は味方として取りこんでいる。
 パウエル・ドクトリンとは、敵に対しては最初から決定的で圧倒的な兵力であたること、それができなければ、何もしないこと、というもの。
 アメリカの街頭で売られるコカインは、2002年には、ほとんどすべてがコロンビアから密輸されたもの。アメリカは麻薬戦争に何百万ドルもつぎ込んだが、効果はなかった。コカイン生産量は増加する一方。除草剤を散布して20万エーカーのコカの木を除去したが、たちまち植え直された。コロンビアのコカイン生産量は、2001年まで増加の一途で、年間800トンに達している。
 アメリカがいくら軍隊を置くって外国を支配しようとしても、その国に本当に必要なものとは違う。真に求められているのは武器ではなく、ミシンであり、水と食料である。そして、民間のNGOだということが改めてよく分かる本です。

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