弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年4月 1日

財閥と帝国主義

著者:坂本雅子、出版社:ミネルヴァ書房
 三井物産と戦前の中国との関わりをテーマとしています。三井物産は軍部と結びついて中国でのアヘン販売に関わっていました。日本軍が大量のアヘンを中国で販売したのは、アヘン販売が手っとり早い資金獲得の方法であったからです。これによって得た資金は、傀儡政権の財源や日本軍の謀略工作の費用に用いられていました。
 三井物産は三井財閥の中枢にあり、資本金1億円という日本一の巨大私企業でした。また、三井財閥は他財閥に群を抜く巨大財閥であり、国家政策への影響力も格別に大きいものがありました。
 中国は、日本にとって武器輸出の中心的な市場でもありました。中国軍に日本製の武器を売り込み、日本製の武器で統一させ、中国市場を恒久的なものにしようとしたのです。ちょうど、今の日本の自衛隊とアメリカとの関係です。アメリカはアメリカ軍の規格にあわない自衛隊の装備を日本に認めていません。
 中国東北部(満州)にあった日本の経済界は、張作霖が商売の邪魔をしているとして、その排除を強硬に要求しました。関東軍による張作霖爆殺事件も、それを背景にしたものだったのです。
 著者は、日本の中国進出について、独占が形成されて過剰資本となったはけ口としてなされたというレーニン型の見解を否定しています。独占の形成される前から三井物産は中国へ進出していったからです。三井物産という財閥会社と中国侵略について、改めて考えさせられました。

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