弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年2月 1日

帝国

著者:アントニオ・ネグリ、出版社:以文社
 本文のみで510頁もある大著です。恒例の人間ドッグ(1泊)に持ち込んだ4冊のうちの1冊です。さすがに読みごたえがあるというか、歯ごたえがありすぎて、大半がよく分からなかったというのが正直なところです。でも、いくつか、なるほどと思えるところがありました。これは決して負け惜しみではありません。
 この本で著者2人が主張したいことは、アメリカ(合衆国)もまた中心とはなりえない。帝国主義は終わった。今後、いかなる国家も、近代のヨーロッパ諸国がかつてそうであったようなあり方で世界の指導者となることはない。グローバリゼーションへの抵抗とローカル性の防衛という「左翼的」戦略は間違っていて、有害である。むしろ、帝国のなかへグローバルに分け入り、それらの流れのもつ複雑性のすべてに向きあう必要がある。
 タキトウスが「彼らは殺戮を行い、それを平和と呼ぶ」と言ったそうです。アメリカのイラク戦争を見て、けだし明言だと思いました。大いに考えさせられる、ズシリと重たい本です。

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