弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年2月 1日

最低で最高の本屋

著者:松浦弥太郎、出版社:DAIーX出版
 高校を中退し、フリーターになってお金を稼いでアメリカにわたり、路上で本屋を始めた青年。さまざまな人と出会うなかでユニークな本屋も続けながら文筆業としても食べていけるようになった。ずい分と年下の若者だが、文章に味わいがある。
 やっぱり文章には清潔感が必要だ。書いて人に伝えるとき、できるだけ清潔感のある言葉を選んで書いていきたい。文章の上手下手は関係ない。文章のなかにどれだけ真実があるかとか、清潔感があるかということの方が大切だ。うまく書くコツは、結局、人に話すように書くことだと思う。
 原稿の締切りの2日くらい前から心の準備を始める。急に思い立っても絶対に書けない。自分で感情を意識的に書くことに向かわせて、さあ書こうと思って机の前に坐ったとき、それがピークになっているのが理想的。考えながら日常生活を送る。書こうと思っていることを頭のなかで発酵させていく。
 ずっと考えていると、あるとき言葉や風景が頭のなかに浮かび上がってくる。諦めなければ必ず言葉が出てくる。考えている間に、自分の記憶の引き出しを開けて、そのなかから「書くこと」を見つけてくるみたいに。書くためのテンションを保つためには、やっぱり規則正しい生活しかない。ちゃんと睡眠をとって、美味しいものを食べて、適度に遊んで。体調が維持できて、はじめて精神的な部分もコントロールできる。
 本人にも言わないし、誰にも言わないが、自分のなかでは、この原稿はこの人に向けて、という思いが必ずある。自分のなかで書く必要性というか、意味づけができる。連載だったら、毎月誰かにラブレターを書いているようなもの。
 文章を書くには精神を高度に集中させる必要があるというのはまったく同感。やっぱりモノカキの道は険しい。

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