弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年2月 1日

生涯最高の失敗

著者:田中耕一、出版社:朝日新聞社
 田中耕一さんがノーベル化学賞をもらったとき、ほとんどの日本人が驚き、また、喜びました(と思います)。なにしろ、まだ43歳で、フツーの会社員、それも肩書は単なる主任でしかないというのです。ノーベル賞なんて、有名大学の名誉教授がもらうものと思いこんでいた私のような日本人にはショックでした。しかも、賞の対象は、1985年の実験結果を1988年6月に論文で発表したものだというのです。まだ田中さんが弱冠28歳のときの実験にもとづくものなのです。これにも驚かされます。文系の世界では考えられないことです。
 その田中さんは、その後も現場で実験を続けることをひたすら願い、講演依頼は9割以上お断りしているとのことです。この本は、そのうちの貴重な講演を再現し、「分かりやすく」ノーベル受賞の対象を説明しています。といっても、実のところ、なんとなく分かった気はしましたが、十分に理解できたわけではありません。それでも、山根一眞氏との対談によって、少しは分かった気にはなります。
 田中耕一さんは、お見合い歴20回ということですが、奥さんは、富山県の同じ高校出身で理数科、耕一さんは普通科出身というのも面白い事実です。
 創造性を発揮するには、勇気、挑戦、不屈の意志、組み合わせ、新たな視点、遊び心、偶然、努力、瞬間的ひらめきの9つが必要だそうです。でも、これだったら、私にもありそうです。そんな元気を与えてくれる本でした。

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