弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年1月 1日

獄窓記

著者:山本譲司、出版社:ポプラ社
 秘書給与の不正受領で実刑判決を受けた民主党の元代議士の刑務所生活が生々しく語られています。政策秘書給与に名義借りをしていたことを告発されたわけですが、告発したのは、その給与の大半を受けていた2人の元私設秘書だったというのですから、人事管理面で甘さがあったのでしょう。
 この本のすごいところは、刑務所生活の実情が体験談として、本人の弱点をふくめて刻明に描かれているところです。看守との人間関係の難しさや、寮内工場という障害者の「働く場」での身のまわりの世話の大変さが具体的に語られています。元代議士がウンコまみれの障害者の世話をしている様子には頭が下がりました。
 刑務所の運動会のフィナーレを飾る工場対抗リレーは、まるで国際大会だ、というくだりにも驚かされます。各工場のリレー選手はほとんど黒光りした肌の外国人なのです。
 それにしても、日頃モノカキを標榜する私の知らない難しい漢語が頻出するのにも驚きました。流汗淋漓、情緒纏綿。読めますか?刑務所でカントやニーチェの哲学書を読んでいたというだけのことはあります。
 また、刑務所のなかのご飯が意外においしいこと、できたてのパンの美味しさなども紹介されています。弁護士にとっても一読の価値があると思います。

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