弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年1月 1日

春になりては・・・椎葉物語

著者:芥川仁、出版社:北斗出版
 心を豊かにしてくれる、実に爽やな写真集だ。
 私は、残念なことに、まだ椎葉村に行ったことがない。その椎葉村の自然豊かな情景が活写され、自然とともに生きる村の人の生活が紹介されている。
 1965年当時、小学校に120人の生徒がいた。今は、全校生徒7人。赤団4人、白団3人で、応援合戦を華々しく繰り広げる。公民館と合同の運動会だ。
 椎葉村の誕生祝い金は、1人なんと100万円。ただし、4人目、5年間は村内に住むことという条件がついている。1人目と2人目は10万円、3人目は50万円。
 干しタケノコが特産というのに驚いた。シイタケ、和牛、木材のどれもが価格低迷で行きづまっているなかの特産物だ。
 椎葉村では14歳で立志式がある。自然を愛し、人間を大切にする村だ。ぜひ一度は行ってみたい。

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日本列島フン虫記

著者:塚本珪一、出版社:青土社
 エジプト文明とスカラベは切っても切れない関係にある。そのスカラベの仲間が日本にも「ふんころがし」としてたくさんいる。コガネムシ科の仲間でもある。
 著者は日本全国、北海道から屋久島まで、ヒグマの糞、ヤクシカの糞のなかにいるフン虫たちを探し求めて歩く。ヤクシマエンマコガネは、背中の両側に突起があり、ツヤツヤと輝いている。カブトムシを小型にしたようなフン虫たちの姿は美しい。
 しかし、そんな彼らにも絶滅の危機が迫っている。牛の背中にかけるだけで皮膚から血液に入って牛の内部・外部寄生虫を駆除する駆虫薬が普及しているからだ。牛の体内には残留しないが牛糞に残留した薬剤は糞を分解する昆虫の発育を阻害する。
 フン虫の世界も奥が深いことが分かる本だ。

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よく生き、よく笑い、よき死と出会う

著者:アルフォンス・デーケン、出版社:新潮社
  自分にできることならベストを尽くすが、そうでないことについては、思いわずらわない。これが私の人生の原則。
 「思い悩むな。空の鳥をよく見なさい。野の花がどのように育つのか、注意して見なさい。明日のことは明日自らが思い悩む。その日の苦労は、その日だけで十分である」(マタイ福音書)
 ほとんどの人間が未開発のままの潜在的能力をたっぷり持っている。この潜在的能力の可能性を開発することが、平凡な人生の危機を乗り越えるための最良の応戦方法だ。人生の危機的状況というのは、ある意味で私たちの潜在的能力に対する挑戦なのだ。挑戦には応戦しなければならない。
 時間意識の大切さ。ギリシア語では時間の概念をクロノスとカイロスに区別する。クロノスは川の流れのように過ぎ去っていく日常的な時間のこと。カイロスは二度と来ない決定的な瞬間をいう。時間の貴重さを意識して、カイロスという唯一の機会をしっかりつかむことができれば、人間として一段と大きく成長することが可能になる。
 人間は永遠への旅人である。旅は心の自由をうむ。旅をすると、人に出会う。出会いによって、人間の視野はいっそう広く深くなっていく。
 上智大学のデーケン教授の最終講義をもとにした本です。味わい深い内容が平易な言葉で語られ、心に深く感銘を受けました。

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おいしいフランス、極上の素材を訪ねる

著者:相原由美子、出版社:岩波アクティブ新書
 いかにも新鮮で美味しそうな食材が写真つきで紹介されています。口の中に自然とツバがわき、ヨダレが垂れてきそうになります。
 アスパラガスは3年ほど前からわが家の庭でも伸びてくれています。旬には、毎朝のように採れたてを味わうことができます。緑で細いものです。電子レンジでチンして熱々のアスパラガスを堪能します。産地直送そのものです。田舎にすむ良さのひとつです。
 ロックフォール(チーズ)は、地下の洞窟で3ヶ月以上熟成されたものでなければ名乗りを許さないという法律がフランスにはあります。モリーユ(キノコ)は食べたことがありますし、美食の本場リヨンで川カマスのクネルも味わいました。でも、トピナンブールという、色と味がさまざまなトマトなど、知らない野菜も紹介されています。
 ダイエット中であることをしばし忘れ、味わいを想像しながら車中で読みふけりました。目の前には、デパ地下のチキン南蛮弁当を置いて、その落差のあまりの大きさを嘆きつつ・・・。

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心は泣いたり、笑ったり

著者:マリーズ・コンデ、出版社:青土社
 カリブ海のグアドループで生まれ育ち、パリに渡った少女の回想記です。フランス語しか話そうとしない現地上流階級の娘として育ちますが、白人ではありません。次第に世の中の様々な矛盾にぶつかっていきます。いかにも生き生きと少女時代が語られ、すっとその時代に溶けこんでいく気がします。
 親友について、「きれいではありません。頭も良くありません」という書き出しで作文を書きました。それは友情を語ろうとしたのであって悪気はありませんでした。
 母についても、そのさまざまな側面を韻律のない自由詩で物語り、母の誕生日に45分にもわたって延々と1人語り続けました。それを黙って最後まで聞いた母は、涙を流し、ただ「おまえは、そんなふうに私のことを見ていたの?」と言っただけだった。
 真実を言ってはいけないのだ、絶対に。自分が愛する人には絶対に。愛する人は輝かしい光で彩らなければ、褒めそやさなければ、実際の姿とは違った存在であると思いこまさなければいけない。そのことを私は学んだ。
 これは10歳の少女がしたことなのです。圧倒されてしまいます。目下、NHKラジオのフランス語講座の応用編でマルチニック人が登場し、この本から抜き出したところがテキストとして使われています。それで私もこの本を買って読んだというわけです。フランス語を勉強して世界がまた少し広がりました。メルシー・ボークー。

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チンパンジーにありがとう

著者:堤秀世、出版社:フレーベル館
 すごい写真に圧倒されます。なんと24歳、芳紀さかりのメス・チンパンジーが高さ5メートルの竹馬に軽々と登って歩くのです。身長120センチ、体重も50キロあります。堂々たる体格です。猿まわしの猿とちがって首に鎖はありません。私と同世代の男性調教師が指示したとおりの芸を次々に演じていきます。そう、ムチはないのです。あくまでもほめて芸を教えるのです。
 チンパンジー・ショーなんて動物虐待だという声が強まり、動物芸はサーカスでもやられなくなったそうです。そんななかで著者は30年もチンパンジー・ショーを続けています。動物への愛情がなかったら、とてもやれないことです。
 この本は写真を見るだけでも価値があります。でも、そう言わずに内容も少し紹介してみます。私がこの本を読み終わってもち歩いていると、原田直子副会長が、「私もチンパンジーには興味があって、たくさん本を読んでるの」と声をかけてくれました。この本もぜひ手にとって読んでみて下さい。
 北大理学部に入学して馬術部に入り、在学中に移動動物園を手伝い、アルバイトとして働いているうちに大学を中退してしまいました。その後、動物調教の厳しさをアメリカに渡って学び、日本に導入しようとしましたが、なかなかうまくいきません。
伊豆シャボテン公園に入ってからも、すぐにはショーを演じることはできませんでした。
 チンパンジーの方も、そう簡単には芸を演じてはくれません。それに、芸を仕込んでも、いずれ公園内の野生の群れに帰さなければいけません。それがまた過酷な試練となるのです。
 ちょっと前屈みにしゃがみこみ、片手を前に出して、「おひかえなさい」という感じで、相手のノドのところに指先をださなければいけない。そして、相手からも同じように手を出されたら、その指先に軽く唇をあてる。それがチンパンジーの初対面の挨拶である。
 この道30年のプロの苦労話です。感激に胸が詰まりそうになりました。

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コロンビア内戦

著者:伊高浩昭、出版社:論創社
 コロンビアって、本当に怖い国だと思いました。1985年11月、ゲリラが最高裁を占拠し、軍隊が反撃して最高裁長官以下115人が死亡しました。ゲリラ(M19)が麻薬マフィアと結託して起きた事件だということです。
 コロンビアでコカインが生産されはじめたのはごく最近、1969年だというのを知って驚きました。メデジン・カルテルのエスコバルとか、カリ・カルテルは日本人の私たちにも有名です。公安庁本部が爆破されたり、大統領や法務大臣などの要職に
ある人々が次々に暗殺されていきます。殺されない人々はマフィアに買収されているのです。
 エスコバルは自分の所有地に自費で別荘のような専用刑務所を建ててから自首し、そこに「収容」されました。外を陸軍が警備し、なかでエスコバルは麻薬取引を指示し、好きなように刑務所を出たり入ったりしていました。そして、アメリカ軍が出動する直前に、エスコバルはこの刑務所から脱走し、翌年、包囲されて殺害されまし
た。
 コロンビアでは、日本人も何人も誘拐されています。日本はエメラルドをコロンビアから輸入しているのです。日本人のエメラルド王・早田英志という人物が存在するというのも驚きでした。熊本出身だそうです。エメラルドの合法取引の3分の1を占める日本は最大のお得意なのです。1人で年商数十億円、15万カラットを扱うというのですから、これまた信じがたい話です。よくぞ、こんな怖い国にいるなと、正直いって思いました。

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シュピルマンの時計

著者:クリストファー・スピルマン、出版社:小学館
 『戦場のピアニスト』は感動的な映画でした。『シンドラーのリスト』とはひと味違いますが、同じように心打たれる実話です。
 主人公のピアニストであるシュピルマンの長男が日本に、それも福岡に住んでいて、奥さんが日本人だなんて、不思議な縁を感じます。
 シュピルマンは戦後結婚して2人の子どもをもうけた。そして、88歳まで長生きすることができた。シュピルマンはユダヤ人ではあったが、ユダヤ教徒ではなかった。ふつうのポーランド人として生活し、ユダヤ人と意識してはいなかった。
 シュピルマンを助けたドイツ将校はナチス幹部ではなく、ドイツ国軍の将校だった。もとは高校の教師であり、シュピルマンに出会ったときは、靴磨きを探していた。映画の日本語字幕には出なかったが、シュピルマンに対して敬語を使って話した。
 シュピルマンは、過去の辛い体験を思い出したくないため、過去を思い出す時間を自分に与えないよう、ピアノを一日中弾き続けた。あの記憶をピアノの音で封印し続けていたのだ。
 映画をみたときの感動の余韻に改めて浸ることのできる本でした。

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アメリカ特殊部隊

著者:トム・クランシー、出版社:原書房
 アメリカの特殊部隊がいかに全世界で活躍しているかを、その最高司令官だった人物が語った本。パナマに侵攻して、ノリエガ将軍を捕まえるまでの経過も具体的に描かれている。そこでは、それぞれの国に主権があることはまったく度外視されていて、読む人に寒気を感じさせる。アメリカからみた「極悪人」をどこまでも追いかけてつかまえるのが特殊部隊の役割だ。イラクのフセイン元大統領をつかまえたのも特殊部隊だという。
 といっても、イラク湾岸戦争では、ヘリコプターで奥地深く侵攻していったところ、村民から見つかり、危うく全滅しそうになった状況も描かれている。やはり、民心をつかむことなしに戦争で本当に勝つことはできない。優秀な武器によって大量の人を殺すことはできても、それで人の心をつかむことはできないのだ。
 核爆発に匹敵する効果をもつというデージーカッターを利用したときの経過も紹介されている。当然とはいえ、殺される側の視点がまったく欠落しているのが本当に恐ろしい。
 イラクへの自衛隊を派遣して、ついに日本人も殺し、殺される事態を迎える。こんな政治は明らかに間違っている。

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自殺した子どもの親たち

著者:若林一美、出版社:青弓社
 自殺は人間のする人間的行為である。それは固有の人間の問題なのだ。それなのに、人は人間を見ずに自殺を論じている。これは、とかく統計的なマクロな視点のみから問題を捉えようとしていた私にもグサリとくる指摘(苦言)でした。
 「ちいさな風の会」という、自殺した子どもの親の集まりがあることを知りました。死別から3年くらいに一つの節目を迎える人が多いということです。悲しみの質が、肉体的な苦痛から沈静化し、さらに奥深く入っていくというのです。
 残された親の手記を読んで、別離の悲しみが惻々と伝わってきました。
 私たちは、単に生きている人間を見ておれば、それが「いのち」を見ていることだと思ってはいけない。たしかに生物としての人間を見ていたとしても、それは、ただ「いのち」の影しか見てはいないことも多い。もう二度と再びこの愛するものの顔を見ることができないかもしれないという、そういう思いをこめてじっとみつめたときに、はじめて目の前に立ち現れてくるのが、本当の「いのち」というもの。
 なかなか考えさせてくれるいい本でした。

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獄窓記

著者:山本譲司、出版社:ポプラ社
 秘書給与の不正受領で実刑判決を受けた民主党の元代議士の刑務所生活が生々しく語られています。政策秘書給与に名義借りをしていたことを告発されたわけですが、告発したのは、その給与の大半を受けていた2人の元私設秘書だったというのですから、人事管理面で甘さがあったのでしょう。
 この本のすごいところは、刑務所生活の実情が体験談として、本人の弱点をふくめて刻明に描かれているところです。看守との人間関係の難しさや、寮内工場という障害者の「働く場」での身のまわりの世話の大変さが具体的に語られています。元代議士がウンコまみれの障害者の世話をしている様子には頭が下がりました。
 刑務所の運動会のフィナーレを飾る工場対抗リレーは、まるで国際大会だ、というくだりにも驚かされます。各工場のリレー選手はほとんど黒光りした肌の外国人なのです。
 それにしても、日頃モノカキを標榜する私の知らない難しい漢語が頻出するのにも驚きました。流汗淋漓、情緒纏綿。読めますか?刑務所でカントやニーチェの哲学書を読んでいたというだけのことはあります。
 また、刑務所のなかのご飯が意外においしいこと、できたてのパンの美味しさなども紹介されています。弁護士にとっても一読の価値があると思います。

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愛を教えてくれた犬たち

著者:篠原淳美、出版社:幻冬舎文庫
 幼いころから犬と一緒に生活してきたため、犬にはとても愛着があります。中学・高校のころはスピッツでした。雄犬なのにルミと、雌犬のような名前で、座敷犬でした。ですから、わが家の畳の上はいつもザラザラしていました。スピッツはキャンキャン吠えて、とてもうるさいのですが、よくなついて親しい関係でした。子どもたちが幼いころは、柴犬を飼っていました。柴犬には「シバワンコ」という可愛いマンガがあります。雌犬なのにマックスという雄犬のような名前でしたが、とても愛らしく、一家中の人気者でした。フィラリアのために若死させてしまって申し訳なく思っています。それ以来、犬は飼っていません。
 この本の著者は、17頭の犬と一緒に生活しているそうです。八ヶ岳の麓では300頭の犬とともに生活している人がいます。犬たちをの生活は大変だろうなと思う反面、うらやましさで一杯になります。犬はこちらが愛情をかけると、必ずこたえてくれるからです。その意味で、この本に飼い主から見捨てられた可哀想な犬が何頭も紹介されていて、胸が痛みます。自分を大切にしない人は犬も大切にしません。そんな人は犬を飼う資格はないのです。犬は、この世に生きる喜び、愛すること、愛されることの大切さを教えてくれる大切な存在だとつくづく思います。

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インカ国家の形成と崩壊

著者:マリア・ロストウォロフスキ、出版社:東洋書林
 16世紀、わずか数百人のスペイン人から攻められ、たちまち崩壊してしまったインカ帝国の脆さがどこに原因していたのか、この本を読んではじめて納得できました。
 インカ帝国でクスコの王たちが支配するようになって間もなく、それがしっかり根をおろして帝国全土を支配し尽くす前にスペイン人が来てしまった。
 インカ帝国内の大民族集団の多くは最近併合されたばかりで、住民たちは過去の自由の味をまだ忘れず、大首長たちはインカ帝国の支配から脱する機会を狙っているというのが大勢だった。スペイン人が来たとき、これら諸民族の首長たちが、かつての独立を回復することを援助してくれると期待して同盟を結んだのは不思議ではなかった。ワスカルとアタワルパという兄弟間の強い憎悪と内戦がインカ帝国の劇的な最期の直接の原因になったのは事実としても、根本的な原因は他ならぬアンデスの首長たちがインカ帝国の桎梏から脱しようとした願望にあった。
 山からきた征服者、つまりクスコの王たちに最良の高地を奪われ、海岸地方の首長に不満がみなぎった。また、インカ帝国のクスコの王たちと大首長とは互恵関係にあり、国家の基礎や構造は強さに欠けていた。この細い絆がスペイン人が来て消滅してしまった。
 インカでは、「もっとも有能な者を王に」というきまりがあった。それが故人の息子であろうと、叔父であろうと、兄弟であろうと、従弟であろうと、問題にすることなく、首長としてもっとも適切な者を王にすることになっていた。この権力継承の習慣が中央権力の弱体化を招いていた。貴族たちの対立が必然的だからである。現実にもインカ帝国では絶え間なく反乱が起こり、国家内部に統一性がなかった。
 王の死は、後継者が決まらないうちは秘密にされ、それを守るために厳重な注意がはらわれ、もっとも忠実で信頼できる者だけに知らされた。
 インカ帝国の諸民族集団は、大部分が帝国の支配を脱したいという望みをもっていたから、スペイン人に味方した。スペイン人を助け、食料・荷担ぎ人、補助部隊を供給した。これらなしには、スペインは事業に成功できなかった。ピサロは、民族集団の首長にある独立への願いを利用することが、彼らの協力を得るために役に立つと見抜いていた。スペイン人は敵対的な国の中に孤立をするどころか、最初から原住民たち頼みにすることができた。彼らは、ときがたつにつれて自分たちを束縛することになる屈服や従属の状態に、まだ気がついていなかった。
 なるほど、なるほど、という指摘です。ひたすら感心しながら読みました。

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ブーヘンヴァルトの日曜日

著者:ホルヘ・センプルン、出版社:紀伊國屋書店
 ナチスのブーヘンヴァルト強制収容所に入れられていたスペイン人の青年の回想記。ブーヘンヴァルト収容所での抵抗活動を描いた本としては『裸で狼の群のなかで』に深く心を打たれたことをすぐに思い出す。21歳だった著者も地下の武装行動
隊の一人だったようだ。この本は、いかにも哲学者の書いた韻文学的な表現が多くて、フランスで23万部も売れたベストセラーというのが信じられない。
 強制収容所のあまりにも過酷な事実を、何も知らない一般市民に対してどうやって知らせるかの議論があった。ある人は、「事態をありのままに、技巧なしに語るべきだ」と言う。しかし、著者は、「うまく語るとは、聞いてもらえるようにという意味だろう。少しは技巧がなければうまくいかないだろう」と反論した。「信じられないような真実をどう語り、想像不能なものへの想像力をどうかきたてるのか。だから、少しは技巧がいるんだ」というのである。私も、これにまったく同感です。
 事実が重たければ重いほど、そのまま伝えようとしても、誰も耳を貸してくれないでしょう。やはり、そこには聞き手の耳に入りやすい工夫もいるのではないでしょうか。
 このところ、なぜかナチスの強制収容所の話を続けて読んでいます。

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中高年自殺

著者:高橋祥友、出版社:ちくま新書
 自殺者は日本では年間3万人台、世界では100万人にのぼっている。日本の自殺率はアメリカより高く、ドイツやフランスよりも高い。都道府県別でみると、宮崎が全国のなかでもズバ抜けて高い(トップは秋田)。大分、鹿児島、沖縄も高い。こう見ると、自己破産の申立が人口比で高いところは自殺率も高いということになりますが、両者に関係があるのかしらん。世界中、女性よりも男性の方が自殺者は多い。女性の方がストレスに柔軟に対応できるから。それにしても、インターネットに「自殺サイト」があるというのは不気味な現象ですよね。
 「死ぬ、死ぬ」と言う人は死なないと広く信じられているが、これは大きな誤解。自殺した人の大多数は、行動を決行する前に自殺の意図を誰かに打ち明けている。これを的確にとらえられるかどうかが、自殺予防の重要な第一歩となる。
 夫が自殺した女性に対して、「いつまでもくよくよしていないで、早く忘れなさい」という言葉は残酷すぎる。たとえ善意であっても、言われた人の心の傷をさらに深くしてしまう。「あなたに何と言葉をかけたらよいか分からない」と言って、黙って手を握った方がどれほどいいか・・・。
 なかなか難しい問題です。この4月以来、私は毎月のように自殺した人の事件や後始末などを担当してきました。この社会の奥底にひそむ闇の深さを感じます。

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いい加減よい加減

著者:野村万之丞、出版社:アクセス・パブリッシング
 学習院高等科で浩宮と同級生だった著者は暴走族に走り、酒、タバコ、女、シンナーまでやっていたという。それは、狂言師をやらなければいけないという「宿命的カルマ」から逃れる唯一の手っとり早い逃避方法だった。浩宮から「キミとボクは同じ運命なんだね」とも言われた。親の家業が子どもにプレッシャーになるというのは、私自身も体験しました。しかし、こればかりは子どもに親を選択する権利がない以上、仕方がないことで、子どもはそれを乗り越えるしかないのです。
 「おはようございます」という言葉は歌舞伎の言葉で、能や狂言では決して言わない。「おつかれさま」は落語家の世界の言葉。狂言の世界では「御首尾(おんしゅび)よお」という。ただし、これは先輩が後輩に言う言葉。
 「ごちそうさま」というのは、タダで料理をいただいたときの返礼の挨拶言葉。だから、レストランで食事のあと支払いをして「ごちそうさま」とマスターや店員に言うのは間違い。「うまかったよ」とか「また来るよ」と言えばいい。おごってくれた人に対してのみ「ごちそうさま」と言うべき。
 狂言師の著者は、ほとよい加減の大切さを強調しています。

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周五郎流

著者:高橋敏夫、出版社:NHK出版
 山本周五郎に読み耽ったのは、司法修習生のころでした。しっとり胸にじーんと沁み入るような江戸の人情話に息をこらして読み耽りました。
 山本周五郎の時代小説のユニークさのひとつに、「死」を言祝(ことほ)がないことがある。リストラから「戦争」体制の整備にいたるまで、「人間」を無視し、「死」を言祝ぐ社会的な力はいま、ますます強くなっている。山本周五郎は、それにあらがった。
 人生は教訓に満ちている。しかし、万人にあてはまる教訓は一つもない。殺すな、盗むなという原則でさえ、絶対ではない(赤ひげ診療譚)。
 30年ぶりに山本周五郎を読み返してみようかな。今、そう考えています。

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心の仕組み

著者:スティーブン・ピンカー、出版社:NHKブックス
 なぜ卵子は大きく、精子は小さいのか。同じ大きさであってはいけないのか?
 仮りに同等の生殖細胞が2つ融合して細胞ができると、やっかいなことになる。それぞれの細胞にあったミトコンドリアが激しく戦い、殺し合う。それではエネルギー不足になってしまう。仲間うちの戦いを防止するため、一方は代謝機構をもたないDNAだけの細胞を用意する。生殖は、DNAの半分と必要な機構をすべて備えた大きな細胞と、DNAの半分だけであとは何もない小さな細胞の融合によっておこなわれることにする。この大きな細胞が卵子、小さな細胞が精子である。精子は小さくて安あがりなので、たくさんつくられる。卵子は大きくて貴重なものだから、養分をつめこんで保護カバーをかける。
 鳥類のメスが不倫するのは、適応度のもっとも高いオスの遺伝子と、子育てにもっとも熱心なオスの投資を両方ともとろうとするから。人間にもあてはまるような気がします。
 あるデート斡旋業者によると、女性は男性のプロフィールにきちんと目をとおすが、男性は女性の写真しか見ない。男性の裕福さを推測する一番いい手がかりは妻の容姿だ。女性の容姿を推測する一番いい手がかりは夫の裕福さだ。これは本当にそう言えそうですね。いろんなことを考えさせられた本でした。

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救急精神病棟

著者:野村進、出版社:講談社
かを探っています。いろいろと教えられました。
 とりわけ深刻なのは、日本人の自殺者が1998年の2万人台から99年の3万人台へと急増し、それ以来ずっと3万人台になってしまったこと。80年代も90年代もずっと2万人ほどだったので、一気に5割も増えたことになる。これはソ連が崩壊したあとの自殺者の増加割合よりも多い。ということは、ソ連の崩壊と同じくらいの社会変動が起きているということ。なかでも、40代、50代の中年男性の自殺者が増えている。日本の社会に今かかっているストレスの凄まじさの象徴だ。
 たいがいの精神病は、睡眠の乱れで始まり、睡眠の復調で快方へと向かう。
 歯と精神病とは、切っても切れない関係がある。精神病患者には明らかに虫歯が多い。
 精神病患者は、心の中ではすごく普通の生活を望んでいる。しかし、病気のせいで表出の仕方が違うから、他人からは「異常」と見られてしまう。
 ジャンヌ・ダルクも、現代の精神医学によれば、「分裂病」(統合失調症)と診断されるに違いない。だから、「分裂病」の人たちは人類に必要な人たちなのであり、抹殺してはいけない人たちなのだ。
 いずれも貴重な指摘だと思いました。超早期英才教育を実践させられた娘が高校で燃え尽き症候群になって、やがて精神病まで発症し、自殺に至ったケースが紹介されています。やはり、何事によらず無理はよくないんだと思いました。

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動物たちの自然健康法

著者:シンディ・エンジェル、出版社:紀伊國屋書店
 キリンがアカシアの木を食べると、アカシアは揮発性の化学物質(メチル・ジャスモネート)を発散する。近隣のアカシアの木はそれを警戒信号として感知し、自分の葉に渋いタンニンを送りこんで防御対策をとる。キリンは食べはじめてしばらくするとアカシアの葉がまずくなるので、遠くへ移動していく。
 タンニンによって植物が身を守っているのは、恐竜が生存していた当時からのこと。非常に渋く、舌を萎縮させ、口内の粘膜と喉を乾燥させる。ただし、タンニンは下痢止め、化膿止め、抗菌剤、駆虫剤でもある。
 ゾウやインコそしてサルもイヌも粘土や土を食べる。粘土はマイコトキシン、内毒素、人工の有毒な化学物質、バクテリアなどを包みこむ。また、腸の内側を保護し、胃酸を抑える制酸剤であり、余分な水分を吸収して下痢を防ぐ。だから、家畜のウシの餌にベントナイト粘土を加えると、ウシは下痢することがほとんどなく、胃腸病が少なくなる。
 健康な人間の尿は無菌で、冷却作用と殺菌作用がある。切り傷、水膨れ、霜焼けの救急医療として使われてきた。アメリカ北西部の先住民は、毎朝、自分の尿で全身を洗い、スキンケアにも使っていた。今の日本でも、朝起きがけの自分の尿をコップ一杯のむという健康法があります。
 自然界には、まだまだ知らないことがたくさんあります。野生動物の智恵に人間はもっと謙虚に学ぶべきだと、つくづく思います。

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日本の優秀企業研究

著者:新原浩朗、出版社:日経新聞社
 大変勉強になりました。日本の優秀企業を実証的に研究しています。
 優秀企業に共通する一般的なものとして、「優秀企業はバイオ・ITなどの先端産業界にある」「 貿易によって国際競争にさらされている企業は強く、内需に依存している企業は弱い」という通念がある。しかし、この2つはいずれも誤りである。
 本書は、このように断言しています。では、日本の優秀企業とは?
 著者は、6つの共通点を掘り出して紹介しています。
 1、分からない事業をやらない勇気
 今や、アメリカでもコングロマリット形態をとる企業は少ない。成功している企業となると、きわめてまれである。
 2、IT時代になっても、暗黙知を形成する段階では、「場」の共有による情報の厚み、ニュアンスが大切なので、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションが欠かせない。社長が現場感覚をもち、電子メールではなく、電話をかけて確認する。メールだとディスカッションができない。
 3、経営者は社外からではなく、傍流の時代。
 改革をリードする経営者に必要な条件とは、既存の考え方やしがらみにとらわれずに発想でき、思い切った決断と行動ができること、また、その企業の事業について現場感覚をもち、事業に精通していることが必要。
 4、危機を企業のチャンスに転化する。
 バッド・ニュース・ファースト。経営者にとって快適でない情報ほど、現場から経営者に伝えなければならない。危機に瀕して自己を全否定せず、自らの持てるものを見つめる。トヨタ生産方式の核は、ライン「止めぬ」ことにある。
 トヨタでは異常管理が一番重要だと考えられている。
 6、目的は継続的に社会に貢献すること。その手段が利益。
 「世のため、人のため」という自発性の企業文化を企業に埋め込んでいること。
 優秀企業は、経営トップが自社の提供する製品・サービスひいては顧客に興味がある。それに対置する企業は株式市場の評価のみに興味がある。
 本書で優秀企業としてとりあげられたのは花王、キャノン、シマノ、信越化学工業、セブン・イレブン・ジャパン、トヨタ自動車、任天堂、本田技研工業、マブチモーター、ヤマト運輸です。

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マイ・ウイング

著者:佐野寿人、出版社:集英社
 先日、男鹿半島でパラグライダーが舞いあがるところを見てきました。次から次へ、風にふわりと乗って離陸していきます。気持ちよさそうではありますが、山頂から舞い上がるのですから、足元を見ると、すぐに高度数百メートルです。身震いしました。そうです。私は高所恐怖症なのです。ですから、飛行機に乗っても決して窓側の席に坐って外を眺めたりはしません。ジェットコースターなんて、あんなものは命を縮めるだけです。君子、危うきに近寄らずです。
 ハングライダーを日本で初めてつくった頓所好勝(とんどころ・よしかつ)氏の一生を描いた感動的な本です。戦前、中学しか出ていない頓所氏が独学でドイツ語を勉強し、ドイツの本で航空力学をマスターしてハングライダーを独力でつくりあげました。それを東京帝大出身の航空検査官が見て合格証書を与える話には心が震えるほど感動しました。
 初めてハングライダー1号機が空を飛んだのは1940年。2号機は1976年のことでした。それから、今やパラグライダーもあって、人間が軽々と空を飛べるようになったのです。人間って、すごいですね。。

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意識とはなにか

著書:茂木健一郎、出版社:ちくま新書
 乳幼児においては、しばしば「大人に見られていること」自体が報酬となる。子どもにとっては、見られていないことは、起こっていないのも同じである。何かをうまくやっているところ、新しいことに挑戦しているところを大人に見てもらうことが、何よりも強くかけがえないのない報酬になる。
 子どもが泣くのは、他者である大人に助けてもらいたい、なぐさめてもらいたいから。泣くという行為が、そもそも社会的にしか存在しえない行為、他者に見られることによってはじめて意味をもつ行為だから。
 泣けばミルクをもらえるという連合の期待が裏切られてはじめて、乳児は母親というものが自分と異なる意思をもった独立した存在、つまり他者であることに気がつきはじめる。他者がもっともかけがえのない存在であるのは、その人が自分を裏切るのが、あくまでも可能性の領域にとどまる時なのである。
 今ここに自分がいます。でも、その自分とは一体いかなる存在で、本当のところは何を考えているのか、自分でもよく分からないこともしばしばです。たとえば、突然に指名されてスピーチするとき、その直前まで考えていたこととは別の言葉が口をついて出てくることがあります。それはいったいなぜなのか。潜在意識が自分をつき動かしていたとしか考えられません。でも、いったい、その潜在意識はどうやって形成され、意識の水面上に表出してきたのか・・・。考えれば考えるほど不思議です。
 0.99999・・・=Xとすると、10X= 9.999999・・・・・10X −X =9X =9  したがって、 X =1であることが証明された。
 うーん、本当かなー・・・。そうなのかなー・・・。よく分かりませんが、なるほど、と言うしかありません。

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借金中毒列島

著者:室井忠道、出版社:岩波アクティブ新書
 消費者金融のオーナーだった著者が対談を通じて、問題提起をしています。なかなか考えさせられる内容です。
 消費者金融は、「笑いながら貸して」「嫌がらせで回収する」という二つの作業で成り立つ仕事。いまの消費者金融は、督促が厳しくないぶん、過剰融資が問題の中心。
 厳しい取立にあって苦しい立場の人がヤミ金融に関わる不可思議さ、これを解明しないことには、法整備をすすめてもザル。借りたい人間がいる限り、無法な貸す業者もなくならない。「ゆとりローン」を利用したのは71万世帯。これは家を持つ資格のない人に融資する欠陥政策だった。
 消費者金融に手を出す人の動機、使途、返済保証、すべてルーズ過ぎる。一瞬の欲望に負けて借りてしまう。一回借金の感覚を覚えた人は、死ぬまで抜け出せない。
 自己破産問題は、金融業者が消え失せない限り、そして安易な借り入れをする債務者が姿を消さない限り、解消するものではない。それは限りなく幻想に近い。まずは、自分からそして身近な人間から意識を変えていくしかない。大量消費時代の今こそ、借金をしないという「美学」をもちたい。
 私は、元サラ金業者の著者の考えにほとんど共感しながら通読しました。

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西部劇を読む事典

著者:芦原伸、出版社:NHK出版
 大草原の彼方から馬に乗ったガンマンが悠然とあらわれてきます。まさしく広い広い西部の大草原です。このオープニング・シーンを見ただけでゾクゾクワクワクしました。映画館のなかは観客でギッシリです。息をこらしてスクリーンを見つめます。
 2挺拳銃の早撃ち、騎兵隊が突撃ラッパを吹き鳴らして疾走するシーン。手に汗をにぎり、口を大きく開けて見とれていました。小学生のころです。
 大学生になってからは、マカロニ・ウェスタンもかなり見ました。クリント・イーストウッドの「夕陽のガンマン」など、渇いた砂嵐のなかの決闘シーンにしびれました。
 最近では、ケヴィン・コスナーの「ダンス・ウィズ・ウルブズ」に感動しました。
 インディアン(今は先住民といいます)に頭の皮を剥ぐという野蛮な習慣はなく、東部の白人が始めたものを真似ただけ。
 「私は何度も遠征隊を率いて彼ら(先住民)と戦ったが、そのたびに我が身を恥じ、わが政府を恥じ、わが軍の軍旗に恥ずかしい思いをした。正しいのはいつも先住民であり、彼らが協約を破ったことは一度もなく、我々が協約を実行したことは一度もなかった」
 「必ず観ておきたいクラシック西部劇30選」が紹介されています。「駅馬車」や「OK牧場の決闘」「広野の七人」などは見た覚えがありますが、その大半は見た記憶のないものでした。ぜひ、もう一度、満席の映画館で大スクリーンを仰ぎながら見てみたいものです。

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ヒンドゥー教

著者:森本達雄、出版社:中央新書
 中国とならんで、世界最大人口を擁するインドは私にとって興味津々の反面、伝え聞く雑踏のすさまじさなどから敬遠したくもある国です。そのインドで人口の80%以上が信じているヒンドゥー教について、日本人向けに分かりやすく書かれた解説本です。
 読書三昧は私の理想とするところですが、この三昧(さんまい)という言葉はヒンディー語の「サマーディ」から来ているそうです。サマーディとは、「最高我への深い精神集中」「瞑想による心の統一・安定」を意味する語です(ほかに、三昧と同じく、墓地という意味もあります)。
 ヒンドゥー教最高の聖典といわれる『バガヴァッド・ギーター』(主神の歌)には、
 たとい極悪人であっても、ひたすら私を信愛するならば、彼はまさしく善人であるとみなされるべきである。彼は正しく決意した人であるから。
 という文章があります。親鸞が『歎異抄』も「善人なをもて住生をとぐ、いはんや悪人をや」というのと同じ思想ではないでしょうか。
 宗教のことは深くは分かりませんが、真理を究めた達人の言葉には本当に含蓄があります。

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ベトナム海の民

著者:郷司正巳、出版社:親泉社
 ベトナムの漁民の生活を撮った写真集です。でも、ひと味ちがうのは、一寸法師の舟を狙ったカメラマンによる写真集だということです。
 丈で編んだだけの直径2メートルほどの丸い舟に乗って海上で漁をしているなんて、写真を見るまで、とても信じられません。でも、たしかに一寸法師のお椀の舟は現代ベトナムに現存するのです。日本にも昔、漂着してきたこともあったのでしょう。
 一寸法師って、平安時代のお話だったでしょうか・・・。

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科学最前線ノート41

著者:池内了、出版社:新書館
 2年前(2001年4月末)、アメリカの民間人(60歳)が宇宙観光に出かけました。その代金は、なんと20億円。ロシアの小遣い稼ぎと言われました。アメリカのスペースシャトルで宇宙ステーションに行き、1週間滞在して戻ってくるのに10
00億円かかるそうです。1回のフライトは5人が定員なので、1人200億円かかることになります。20億円を支払った60歳のアメリカ人は簡単な訓練だけで出かけたため、飛行中ずっと激しい胃の痛みに苦しんだそうです。
 木星の衛星エウロパには水があり、有機分子と地熱があることがわかっていて、生命が誕生しうる環境とのことです。果たして、地球外にも生命体はいるのでしょうか・・・。たまには、こんなことも考えてみたいものです。

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ガイジン夏遍路

著者:クレイグ・マクラクラン、出版社:小学館
 日本語ペラペラの長身のニュージーランド人が四国八十八ヶ所を外人お遍路さんとして歩いてまわった記録。
 広島の佐々木猛也弁護士(福岡のささきかおり弁護士の父親)は、少しずつお遍路さんをしていると事務所ニュースに書いていた。テクテク1人で、何かしら考えさせられることがあるとは思う。それでも、歩き疲れて、今晩どこに泊まるのかそのつど心配しなくてはいけないなんて・・・。小学校のプールでひと泳ぎし、お寺の境内で蚊と一晩中たたかいながら寝袋にくるまって寝るなんて、軟弱な私にはとてもできそうもない。やっぱり日本語のできる変なガイジンは偉い。

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古代エジプト、埋もれた記憶

著者:吉村作治、出版社:青春出版社
 ピラミッドは王の墓ではないし、奴隷がつくったものではない。本当か?
 公共事業説っていうのがあって、それが最近の有力説だなんて、信じられない。ナイル川が年に1回氾濫する。その氾濫期の夏の4ヶ月間は、農民は何もすることがない。そこで、公共事業としてピラミッドをつくり、人々に生きる目的をもたせた。
王のためのピラミッドを建設する手伝いをすることで、王とともにあの世に行ける、永遠の生を授けられるという人生の目的をもらった。だから、人々は喜んでピラミッドをつくる事業に参加した。そして、給与として国に残した父母や妻子に食べ物を与
えられた。もちろん参加した本人もアゴアシ付き。
 ふーん、そうなのか・・・。それだったら、ますますすごい、エジプトのピラミッドって・・・。

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