弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2003年12月 1日

オランウータンの不思議社会

著者:鈴木晃、出版社:岩波ジュニア新書
 オランウータンはボルネオとスマトラにしかいない大型類人猿です。オランウータンとは、マレー語で「オラン」がヒヒ、「フタン」が森の意味ですから、「森のヒト」ということです。ですから、オランウータンは決して「一匹」などと呼ぶべきではありません。一頭、いや一人と呼ぶべき存在です。今や、絶滅に瀕していますが、それも人間、とくに日本人のせいなのは残念です。
 オランウータンは密林のなかで単独生活することを基本としていますが、孤立して生活しているわけではありません。オスとメスは森のなかに「デート・スポット」というべき出会いの場があり、交尾し、繁殖します。その交尾は、ほとんどお腹とお腹をつきあわせた前向きの姿勢(いわゆる正常位)、メスの方があお向けに寝ころんですることが多いそうです。チンパンジーの交尾時間が2〜3分、ゴリラが数分から長くて8分間というのに、オランウータンは25〜40分間、長いと1時間に及ぶものもあります。
 オランウータンの子育ては実に愛情たっぷりで、6〜8歳まで母親が子どもの面倒をみます。それまでに、どの樹種から、どうやって食物を手に入れるのか、母親から学ぶのです。ですから、母親と一緒に育っていないオランウータンの孤児を、いきなり森に戻してやっても、その子は森で生きていくことができません。ボルネオ島の熱帯雨林を守るのは、それを破壊し続けてきた日本人の責任だとつくづく思いました。

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