弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2003年12月 1日

評伝・岡潔

著者:高瀬正仁、出版社:海鳥社
 日本の近代数学の第一人者・岡潔の生い立ちからフィールドワークで綿密にたどった大著です。542頁もあって、難しい数学の話もありますので、そのあたりはいつものように適当に飛ばし読みしました。
 岡潔は、私が中学2年生のころ、『春宵十話』というエッセイ集を出して人気を集めました。私がその本を読んだのは中学3年生か高校1年生のころでした。分かりやすくて、眼を開かせる文章だったので、とても感心したことを今もよく覚えています。対談集『人間の建設』は高校2年生のときに読み、これまた感激しました。天才数学者ですが、狂気に走ったこともあることを、この本で初めて知りました。岡潔35歳、広島大学の助教授のとき、「発狂して強盗事件を起こして」脳病院に収容されたのです。あんまり根をつめて考えると気が狂うこともあるのでしょう。
 岡潔といっても、50歳以下の人にはあまりなじみがないことでしょうが、先の2冊を読んで感銘を受けた人には天才の生きざまを知る手がかりとなる本です。

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