弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2003年12月 1日

築地のしきたり

著者:小林充、出版社:NHK出版
 居酒屋の水槽で泳いでいる魚の多くは痩せさらばえていて、言ってみればホネカワスジエモンみたいな魚だ。せいぜい水槽に放って1晩くらいならアクが抜けて弾力のある身質にもなるけど、これが3日も4日も続くようではダメ。そんなのを活造りにして食べるなんて愚の骨頂、最下等の食べ方。えーっ、そうなんだー。ちっとも知りませんでした。
 タイやヒラメなどの白身魚を生で食べるときは、締めてから10〜12時間くらいたったころが一番うまい。これは、うま味を感じさせるイノシン酸がそのころピークに達するから。締めてすぐだとイノシン酸はほとんど含まれていない。夕方6時に店で刺身として出すのなら、当日の朝6時から8時の間に魚を締める。締めるというのは、魚を苦悶死させず、スパッと一気に息の根を止めること。マグロの場合には、金属棒(神経棒)をつかって、脊髄に突っこんで神経を麻痺させる。なーるほど、世の中知らないことって多いですね・・・。
 マグロは昭和初めまでは赤身だけが食べられていて、トロ(脂身)は捨てられていた。トロなんて猫またぎと言って、日雇い労働者や苦学生が鍋物にして食べていたもの。江戸中期までは、マグロは、サツマイモ、カボチャと並ぶ下品な食べ物とされていた。ええーっ、そうなのー・・・。スーパーで100グラム1000円で売られている中トロは、オーストラリア産の畜養もの。蓄養マグロは二毛作で、味や色はエサ次第。安くてうまいマグロはない。安いマグロはまずく、高いマグロはうまい。なるほど、なるほど、そうなんだねー・・・。
 一度は築地市場をのぞいてみよう。水産物の取引が1日2300トン、20億円のお金が動くところ。世界一の取引高を誇っている。手頃な魚河岸の案内書だ。

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