弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2003年12月 1日

裏支配

出版社:廣済堂出版
 田中角栄が逮捕されたとき、私はたまたま東京地検の近くにいました。連行される現場を見たわけではありません。連行した検察官は私が横浜修習のとき指導担当だった松田昇検事でした。それほど有能だという印象は受けたことはありませんでした(むしろ、純朴な感じでした)が、その後、出世街道を驀進していきました。
 この本は田中角栄のプライバシーも暴いています。角栄は醤油が大好きで、いなり寿司にもウナギにも、たっぷり醤油をひたすほど漬けて食べていました。角栄は元旦に目白で新年を祝い、2日に、神楽坂の別宅で認知した2人の息子とともに新年を祝い、3日は佐藤昭とその娘のとともに新年を迎えるのを常としていた。娘の真紀子は、それを知って父親を許さなかった。角栄は真紀子をシャモと呼び、両者の関係はギスギスしていた。それでも、真紀子は角栄を見事に利用しています。それも父親への報復なのでしょう。
 ロッキード事件が、田中角栄の5億円収賄事件とされていることに角栄は我慢ならなかった。実際には1ケタちがう55億円の賄賂がロッキード社から日本政府の高官に流れた。30億円がトライスター導入、そして25億円が対潜哨戒機P3Cオライオン導入だった。角栄の5億円は氷山の一角にすぎなかったのに、結局、解明されないままに終わった。
 自民党による対野党工作について、角栄は、次のように述べています。野党にお金を受けとらせるのは簡単ではない。簡単にお金を受けとる奴はいない。だから、少しずつやるんだ。麻雀で負けるのも、海外旅行に行くときに餞別を贈るのも、そのためだ。そういうところから始まる。一番良いのは奥さん同伴の海外視察旅行だ。そこで奥さんぐるみの関係ができる。日本に帰ってからも一緒に食事をしたりして、そのときに奥さんに贈り物をする。そうやって少しずつ受けとらせるようにする。お金を受けとらせるのは難しいものだ。なるほど、こうやって野党を取りこんでいくのですね・・・。

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