弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2003年12月 1日

死刑囚、最後の晩餐

著者:タイ・トレッドウェル、出版社:筑摩書房
 アメリカには死刑執行の3時間前に何でも食べたいものをリクエストできる制度があるそうです。そこで、実際に死刑囚がいったい何を注文したかを明らかにした本です。悪い奴を死刑執行するのは当然だというトーンで貫かれていますから、読んでいて少々いやになりますが、アメリカの死刑制度の現実の一端を知ることはできます。
 ちなみに、日本にはそんな制度はありません。リクエストどころか、死刑はある日突然、何時間か前に知らされ、まもなく執行されるのです。正月の3ヶ日を除くことになっていますので、死刑囚の気の休まるのは正月3ヶ日しかありません。これが平均で死刑執行まで10年ほど続くのです。アメリカには、現在、死刑囚が3000人以上いて(女性は49人)、この27年間に500人以上が処刑されました。うちテキサス州がもっとも多く144人にのぼります。もっとも死刑執行を認めているのは38州で、全部の州ではありません。電気椅子のところも5州ありますが、大半は薬物注射による執行です。そこで、何をリクエストしたかですが、たとえばテキサス州では4分の1がハンバーガーを、次いで、ステーキを注文したといいます。やはり、日頃食べ慣れたものを食べたいということでしょう。ステーキのほか、目玉焼き6個、ベーコン16枚、ハッシュウブラウン、イチゴシャーベット、ドクターペッパーコーラ、セブンアップ、コーヒーそして胃薬を注文した死刑囚もいたということです。
 アメリカでは刑務所も危険なところです。ところが、死刑囚監房は24時間の監視体制があるため、アメリカで一番安全な場所だというのです。いろいろ考えされられる本ではありました。

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー