弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2003年11月 1日

ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?

著者:アレン・ネルソン、出版社:講談社
 子ども向きの本ですが、大人が読んでも感動します。
 ニューヨークのハーレム(スラム街)で生まれ育ち、海兵隊に入ってベトナム戦争に従軍し、そこでベトナム人を殺します。除隊後、ニューヨークに戻って、ホームレスの生活を送っているとき、同級生に出会って自分を取り戻すチャンスに恵まれます。小学校4年生に向かって、ベトナムでの自分の体験を心を開いて語ったのです。海兵隊員になるというのは、戦場で、おそれることなく、上官に言われるままに人を殺す人間になるということ。兵士は考えてはいけない。考えるのは上官の仕事。
 確実に命中させ、確実に敵の戦闘能力をうばい、死にいたらしめるためには下腹部を狙え。そこが人間のからだでもっとも大きな部分だから。下腹部には一発でなく、何発も弾丸を撃ちこむ。本当の戦争とは、ただひたすら歩くこと。自分の体重よりも重い(70キロ)荷物を背負い、熱帯のジャングルの中を気絶しそうになるまで歩くこと。戦い、殺し、生きのびるためには、死体を見て何かを感じてはならない。死体を探すには注意深く耳をすます。何百匹、何千匹のハエの羽音が聞こえてくる。臭覚に全神経を集中させる。死体特有の甘い臭いがただよっているのが分かる。ネルソンさんは、人間性を取り戻すために大変な年月をかけています。本当に戦争とは、むごいものです。

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