弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2003年11月 1日

静かなる戦争

著者:デービット・ハルバースタム、出版社:PHP
 レーガン・ブッシュ・クリントン政権の内幕を情景描写、人物評をまじえて具体的に明らかにした本。
 レーガンは、複雑で鋭敏な思考、瑣末な情報や逸話の正確な記憶力をほとんどもっていなかった。レーガンの知っていたのはほんのわずかだった。しかし、彼の強みは、そのわずかなことに完全に忠実で、その正しさを微塵も疑わなかった。「小さな政府がよい」「政府は、できる限り個人の問題に干渉すべきでない」「政府の干渉がなければ、アメリカは再び偉大な国になれる」と固く信じていた。暗い時代だったから、自信にみちあふれたレーガンが歓迎された。
 ブッシュは湾岸戦争を数日間で圧倒的に勝ち90%の支持率を得たが、経済政策で国民の支持を失った。「謙虚」なブッシュは、スピーチ・ライターのつくった演説原稿に「私」という一人称単数を使うことを嫌がった。レーガンのまねをしてレーガンとはりあおうものなら、最悪の事態になりかねないことを十分承知していた。あくまでも自分らしくふるまおうとした。
 クリントンは速読が得意で、口頭の報告よりも、自分で書類に目を通そうとする。
 その育った家庭はアルコール中毒の義父のために崩壊寸前だったため、クリントンは争いのない「崩壊家庭」の緊張を和らげる方法を学んでいた。だから、同じような状況にあった民主党内のゴタゴタをまとめるのも容易だった。
 クリントンは、不倫問題などでマスコミに大いに叩かれたが、打たれ強かった。ただし、泣き言ばかりいう人間ではあった。ヒラリーも朝食のとき、マスコミの批判にことごとく反応してクリントンをいらだたせた。
 アメリカのマスコミはニュースキャスターがスターとなり、年俸800万ドルという、とんでもない高給とりになった。そして、ボスニアとかソマリアとか、国外のことはあまり取りあげず、娯楽と「内向き志向」になってしまった。
 アメリカの支配層の実像が容赦なく暴かれていくところは小気味がいい。日本には類書がないように思う。それにしても、こんなアメリカに日本がいつまでも言いなりになっていていいとは、とても思えない・・・。

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