弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2003年9月 1日

日本に治安は再生できるか

著者:前田雅英、出版社:ちくま新書
 著者は団塊の世代の刑法学者。「大人は犯罪をあまり犯さない国、日本」がついに崩壊しはじめたという警告の書。これまで、日本は治安の良さを誇ってきた。浴衣姿の若い娘が1人で夜道を銭湯に通っているのを見て外国人が驚く。今や、そんな光景が神話となりつつある。刑務所などの行刑施設に、定員6万5千人を上まわり、6万8千人が収容されている。女性も増え、3千人をこしている。覚せい剤事犯の2割は女性だが、実は10代では男女半々になっている。刑務官は1万5千人で、10年前に1人あたり3人だったのが、今では5人を受けもっている。それもあって、所内の暴行・傷害は5年間で3700件から6400件に増え、懲罰件数も2万6千件から3万7千件へと増えた。日本でも外国並みに刑務所での囚人暴動がいつ起きても不思議ではない状況になっている。
 ともかく犯罪が増えている。とくに外国人と女性が増えた。1年間に検挙される32万5千人のうち20万2千人が送検され、12万人あまりが警察で放免される。被告人は5万人にみたないが、判決は重罰化の傾向にある。
 犯罪の検挙率は急激に低下し、2割を切った。とくに強盗罪では5割を切ってしまった。
 凶悪犯罪の増加が目立つ。強盗は10年間で3倍になった。強制わいせつもそれに近く、166%贈。絶対数の多い窃盗も1.5倍になった。来日外国人の犯罪が増えている。強盗の5割以上が中国人で、4分の1がブラジル人。そして強盗の4割は少年。いろいろ考えさせられる衝撃的な問題提起の本だと受けとめた。

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