弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2003年8月 1日

アメリカの国家犯罪全書

著者:ウィリアム・ブルム、出版社:作品社
 7月30日の西日本新聞にショッキングな記事がのっていた。アメリカで131万人もの子どもが行方不明になっているという。家出63万人、誘拐3万3千人、離婚した親に連れ去られて不明となった子どもが12万人、誘拐によって死傷した子どもは20万人にのぼるという。いずれも途方もなく多い人数で、とてもそのまま信じられないほどだ。日本でも、渋谷の小学生誘拐事件が起きて世間を心配させたが、アメリカのスケールはケタが違う。誘拐・監禁の多くは性的暴力やレイプと結びついているとみられている。防止策の1つとして、半年に1回は子どもの顔写真をとっておくこととされているのにも驚かされる。
 この本は、拉致・テロ・暗殺・拷問・毒ガス・・・、イラクや北朝鮮どころではないアメリカの国家犯罪をあますところなく網羅しており、まさに全書と呼ぶにふさわしい。
 これからアメリカに留学しようという子どもを持つ親にとっては必読の書だと思う。同時に、もういいかげんにしてくれと、目をふさぎたくなる本でもある。
 かつてガンジーはこう述べたという。あなたがすることのほとんどは無意味であるが、それでもしなくてはならない。そうしたことをするのは、世界を変えるためではなく、世界によって自分が変えられないようにするためである。

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