弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2003年6月 1日

手紙

著者:東野圭吾、出版社:毎日新聞社
切なくて切なくて、泣けてくる話。福岡県弁護士会の職員(吉田さん)から、絶対おすすめですとキッパリ断言され、迷わずその日のうちに書店で見つけて読みはじめた。
 兄が強盗殺人で刑務所に服役。弟は、そのハンディを背負って社会でなんとか生きていこうとする。両親は死亡しており、兄弟2人きり。ところが、刑務所にいる兄の存在が弟の行く手に何度となく大きな障害となって立ちふさがる。大学進学、就職、恋愛、子ども・・・。弟は兄を捨て去ろうとする。しかし・・・。身内に犯罪をおかした人の辛さがしみじみと実感される。たまらなくなって途中で放り出したいほどの切なさに身が震える。
 でも、このあとどうなるのかという好奇心もあって、2日間で読みとおした。
 弁護人になって被告人の情状弁論をし、その行く末を考えることはあっても、その身内のことまでは考えたことが少なかったので、いわば頂門の一針でもあった。想像力がかきたてられる一冊。

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