福岡県弁護士会 主張・提言

2010年11月11日

司法修習給費制の存続を求める会長声明

声明

 司法修習生に対し給与を支給する制度(以下、「給費制」という)に代えて、必要な者に修習資金を国が貸与する制度(以下「貸与制」という)を定めた「裁判所法の一部を改正する法律」(以下、「改正裁判所法」という)が、本年11月1日に施行された。
 改正裁判所法は、2004年12月10日に成立したが、その附帯決議において、「統一・公正・平等という司法修習の理念が損なわれることがないよう、また、経済的事情から法曹への道を断念する事態を招くことのないよう、法曹養成制度全体の財政支援の在り方も含め、関係機関と十分な協議を行うこと」と決議されていた。
 しかるに、法曹を目指す法科大学院の適性試験受験者数は顕著に減少しており、大学入試センター実施の適性試験受験者は、2003年に39,350人であったものが2010年には8,650人にまで減少している。  
 その背景として、司法試験合格率の低下や急激な法曹人口増による就職難などの問題に加えて、法科大学院の学費や生活費などの経済的負担が大きいことが指摘されている。当会が本年8月に実施した司法修習生やロースクール生を対象とした調査では、負債がある人の平均負債額は435万円余にも及んだ。かかる状況の下で貸与制を強行すれば、さらに300万円前後の負担増となり、法曹志願者減少傾向に拍車をかけることは明らかであり、まさしく、上記附帯決議が危惧していた事態に直面することとなる。
 当会は、司法修習生に対する給費制の存続を最重要課題に掲げて、市民団体、労働団体、消費者団体などと連携・協力し、法改正の実現を求めて、請願署名活動、市民集会の開催、国会議員要請等の活動を行ってきた。請願署名は、わずか半年で、全国で67万余筆、当会集約分だけでも 8万数千筆が寄せられ、市民の中でも給費制の存続を求める声が強いことを実感することができた。また、国会においても、与野党を通じて多くの議員がこの問題に理解を示している。
 もとより当会としても、わが国が財政難であること十分に理解するものである。しかし、基本的人権の擁護、市民の諸権利の実現、社会的正義の実現を使命とする法曹は、これまでも、そしてこれからも、司法を担う公共財であり、国民のための存在であり続けるべきものである。国家が責任を持ってかかる法曹を養成すべしとの理念、そしてこれを担保するための給費制は、わが国が健全であり続けるために、今後も守り続けられるべき根幹的制度である。
 残念ながら、本年11月1日までに、与野党間の調整がつかなかったことから、改正裁判所法が施行されることになったが、その後も国会において合意点を得るための折衝が継続されている。
 当会は、法曹養成制度全体の見直が必要と考え、そのための検討もはじめているが、貸与制の実施については今一度これを見直し、給費制を復活させて、その上でひろく根源的な論議を尽くすべきであると考える。貸与制を実施した上で弊害があれば見直せばよいとの声も聞かれるが、法曹志願者の激減という深刻な弊害が発生することは確実であり、このままでは取り返しのつかない事態となることは必至である。
 ここに改めて、今臨時国会において、施行された改正裁判所法を再度改正し、給費制を存続させることを強く求めるものである。
 
                2010年(平成22年)11月10日
                福岡県弁護士会 会長 市丸信敏

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